不況の本質−需給ギャップ(00.3.15)
今は日本は不況といわれていますが、その本質を確認します。それは需給ギャップです。
■ミクロ経済学における「需要」と「供給」
「需要」と「供給」の関係は、ミクロ経済学では分かりやすいです。需要は「ものを欲しがる(≒買いたい)度合い」、供給は「ものを売りたい度合い」です。なので、それがつりあうように価格が変動する、というのが完全市場の仮定です。
一般に、
・「ものが安ければ沢山買いたい」=需要曲線は価格の減少関数
・「ものが高いのであれば沢山売りたい」=供給曲線は価格の増加関数
となります。
余談ですが、このように需要量や供給量は価格の関数になります。なので、数学的には本当はグラフを書く時は、量が縦軸、価格が横軸になるべきです。でも通常教科書で見るのは、価格が縦軸、量が横軸ですよね。なので、これら需要関数:P=-2X+40
などは正式には逆需要関数といいます。なぜ、こうしたおかしな慣習になったかといえば、大先生マーシャルが講義のときに間違えて書いていたからです。これはウソのような本当の話です。
■マクロ経済学における「需要」と「供給」
さて、ではマクロ経済学における「需要」と「供給」とはなんでしょうか。
細かい議論はしませんが、こう理解してください。
・「需要」は「ものを買おうとすること、あるいは支出する行為」
・「供給」は「ものを売ろうとすること、あるいは所得が増える行為」
そうすると、マクロ経済における「需要」はなんでしょうか?答えは消費、政府支出、投資などです。ここで投資とはいわゆる株式投資などではなく、設備投資やR&D投資など実物的な投資のことです。式で見ると Y=C+I+G+X-M となります。
(C:消費、I:投資、G:政府支出、X:輸出、M:輸入)
「供給」は、資本収益、企業売上や労働者の賃金など所得につながる事です。
なので代表的個人は、マクロ的には働きを「供給」して賃金所得を獲得して、何かを「需要」して(=購入して)消費している、という感じです。ここら辺は感じがつかみにくく、経済学部の学生でも、なれないとアヤフヤな部分です。
■需給ギャップ
ようやく、ここからが本題ですが、均衡点では需要と供給が一致している必要があります。一致していない経済は不安定になります。ところが現在の日本では一致しておらず、需要が供給に比べて少なく、つまり「需給ギャップ」が存在しているわけです。
具体的に言えば、消費、政府支出、設備投資など合計の水準が、企業などの供給のキャパシティーに比べて低い水準なわけです。ちなみに「需要に比べて供給が高い」ともいえますが、経済の安定のためには「供給を減らす」というプロセスよりも、「需要を高める」というプロセスが必要になります。
つまり、不況の問題点は供給面ではなく、需要面という事になります。もちろん、何が供給で何が需要かというのは、一概には言えず単純な問題ではないのですが、ここが本質的な問題点です。
そしてこの需要は、様々な条件で左右されます。
・消費は、いわゆる将来への不安なども影響しますし、冬ボーナスの少なさ、
2000問題で年末海外旅行の大幅減少などの実体的な側面も影響します。
・公共投資などの政府支出も、この需要を刺激しているわけです。
・企業のリストラなどは企業の資産を健全化することで、新規投資の需要を
創出します。一方で失業者の増大など、将来に対する不安を大きくするので
消費にはマイナスの影響です。
様々な政策を考えられている背景には、こうした需要サイドへの視点があります。以前物議を醸したクルーグマン教授の調整インフレ論も、結局は「インフレをおこし実質利子率を下げる事で、投資需要を増大させよう」というISバランスの需要サイドへの刺激策です。
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