公共財供給の理論と現実(99.12.18)
通常公共財の供給は、理論的にはBowenの中位投票者ルールにより、供給量は等負担のルールで決まり、社会的に最適な供給量よりも少なくなるとされる。(中位投票者ルールとは、投票者が選挙で政党を選ぶとき、政党は公約へコミットしなければならず、すると公約は中位投票者の支持する政策と同じになるというもの)
ところが現実には日本を含め、公共財や公共投資などは過大に実現する傾向がある。これはなぜだろうか?以下3つほど説明する。(本来は数式での説明が明示的だが、表現の都合上言葉で書く事にする)
1つめは政治的便益の問題である。
政治家は選挙区での支持率アップと政治資金獲得が大きな目的であり、そのため公共財のコストの一部が政治家に戻る構造が考えられる。すなわち、ネットで政治家(政府)が公共財に支払うコストがへるわけである。すると供給費用を過小評価することになり、結果として公共財の過剰供給になる。
この背景には「鉄のトライアングル」という官僚・政治家・産業界の絡み合いがある。官僚が、政治家の圧力のもと公共事業を決定し、業者の談合で発生したレントが政治家にわたる。これが上の理論の現実的な分析である。
2つめは他地域へのフリーライダーが考えられる。
公共財の特徴の1つである非排除性により、公共財を一旦供給すると、それを利用する人を限定することはほとんど不可能になる。また地方公共財はこの問題がつきまとうが、中央政府が補助金をある割合で拠出すると、該当地域の地方政府が負担するのはコスト全体の一部分になる。
すると1つ目と同様に、該当地域にとって支払う費用がへるので、供給費用を過小評価して、公共財を過剰供給することになる。補助金は地方分権の仮定の元では、他地域の税収の一部と考えられるので、そこにFree
Riderの要素が生まれる。
3つめは、政権交代に伴うDynamic "Free Riding"と呼ばれるものである。これは前号のマガジンでも取り上げたが、政権交代のタイミングでは大規模な財政支出が起こるというものである。
ここで2大政党制を想定して考えてみよう。
軍事に関心のある共和党(与党)と福祉に関心のある民主党を考える。選挙によって政権が交代することを予想すると、与党である共和党はどのように動くだろうか。答えは、政権交代しても民主党が赤字削減をせざるをえない状況を作るのである。すなわち政権党である間にあらかじめ政府赤字を作るインセンティブがあり、共和党は戦略的に防衛支出を大幅にアップすることになる。これが公共財の過剰供給の3つ目の説明である。
以上3つの理論的分析でしたが、みなさんはどのような感想でしょうか。ちょっと難しい気もするので、質問もどしどし下さい。個人的には、日本では1つめの説明がもっとも明示的に適用される気がします。
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