http://www.KRIEP.com

ばなー
Welcome to KREIP!!
   

 

Home
Concept
Profile
Economics
Policy
Magazine
Note
Books
Papers
Links
BBS

 

Since
2001.1.8

 

 

持株会社と金融機関の関係(00.9.28)

 

9/21のレポートでは、持株会社の簡単な説明と「そうやってグループを形成するのは独占じゃないの?」という問いへの経済学的分析をしました。今回は、本題というか、その持株グループへ金融機関が入ることの分析をします。今までは禁止だったのですが、異業種参入も含めて今後は許可されます。

そういう状態になるにつけ、金融庁が新規に規制したのですが、それはどんなプロセスなのか、またなぜそうなるのか、をまとめます。

■金融機関と持株システムをとりまく流れ

金融機関と持株会社をとりまく近年の大きな流れは以下のようになる。

持株会社システム解禁(金融機関はだめ)
 →金融持株会社解禁(1年位前) 
 →金融業への異業種参入を認可(半年くらい前)
 →金融機関が発行する金融債への規制(最近)※時期は概算

■金融持株会社

金融機関のグループを統括する持株会社のこと。実際に銀行が合併する時は、いきなり1つの銀行にするのではなく、A行とB行と、それらを統括する持株会社をつくる(当然、両行の株式を取得)形式になる。最近のさくら・住友の合併なども、その方式をとっている。※持株会社に関しては9.21のコラムも参照

■異業種参入

金融自由化の一環で、金融業への異業種参入が可能になった。つまり金融業をメインにしていない企業が、金融業も出来るようになったのである。最近ではソニー銀行や、イトーヨーカドー銀行がそれにあたる。

ちなみに消費者金融と銀行の大きな違いの1つは、預金があるかないか、で、人のお金を預かって運用するのか(それはいつか返すので他人資本≒負債)、あるいは自己資本あるいは借り入れで金を貸すか、という差である。当然のことながら、不特定多数の預金者のお金を預かる銀行の方が、私企業といえどより社会的な役割が必要とされるのである。今までは、この社会的な役割から、金融機関への自由な参入には慎重にならざるをえなかったのである。

■これらによる変化

これらの制度改正によって、持株グループの中に金融機関が入る可能性が出てきたのである。つまり、異業種参入を認可すれば、ソニー銀行が設立され、それはソニーが大半を出資して大株主になるので、ソニーが持株グループを組織していれば、当然その銀行も構成メンバーになるのである。

通常企業は、金融機関から借り入れをしたり、あるいは社債を発行して資金調達をしている。社債を発行しても、マーケットに流れるのはわずかで、金融機関などが引き受けたりしている。(ちなみに、日本はこの社債マーケットが発展しておらず、それがひいては円の国際化を阻害している、という見方もある。アメリカは、このボンド・マーケットが広範囲で充実しており、ジャンクボンドのマーケットまである)

その際には担保(最近は土地担保主義は崩れているが)や収益性などを審査して、最終的に貸し出しや引受けを決めるのである。

ところが、グループ内に金融機関が存在したら、その審査基準はどうなるであろうか。

つまり、同じグループ内の企業への貸し出しが多くなったり、それが健全であればよいが、資金繰りが苦しく破綻懸念がある企業だった場合には、金融機関が求められる公共性がゆがめられる可能性が存在するのである。(片山グループには片山銀行があるとする。同じグループの片山建築がつぶれそうな時に、同じグループのよしみでさあ、といって、つぶれそうにもかかわらず片山銀行から大規模な貸し出しが行われる可能性がある)

そうすると破綻懸念のあるグループ企業へのリスク貸出が増えることで、その銀行が倒産したり、ひいてはシステミックリスクにつながることも十分考えられ、結果として金融庁が、グループ内の債券引受けには限度を設ける、というような規制を考えるにいたったのである。

ここ数年の間、政府は、銀行がつぶれたらその悪影響が大きいので、公的資金という多額の税金を投入してまで、銀行の健全性を守ろうとしたきた。そして健全性という面からは、銀行は消費者の預金を預かっている以上、たとえ親しいグループ企業でも、危険と分かっている債権に多額の貸出をしてはいけないのである。今回の規制は、そのモラルハザードを外枠で制限するものといえる。

一方でコンビニ銀行や決済専門銀行など、異業種参入ならではの新しい金融サービスが生まれようとしている。この流れは前回の中級編で書いた通り、サービスという側面での競争活性化につながり、消費者にとっては利便性の向上が期待できて、とても望ましいのも事実である。

▲このページのトップに戻る▲

POLICY Top Comment


当サイトについて著作権問い合わせ更新履歴サイトマップ

Copyright(c) 2000-2002. Katayama Research Institute of Economics and Policy. All right reserved.