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外形標準課税の分析 (00.2.13)

 

 

ここでは石原都知事が導入を提案した外形標準課税について、最初に石原さんの提案・各界の反応をまとめた後、外形標準課税とは何か、をまとめる。その上で、若干の分析をする。


【石原さんの提案(2000年2月7日)】

・資金量5兆円以上の銀行に対し、法人事業税として業務粗利益に原則3%を
 課税する外形標準課税を導入する。
・財政再建の一環で安定収入の確保のため、赤字法人でも対象にする。
・2000年から5年間の時限措置。
・実際に税収が入るのは2001年度からで、増収効果は毎年度1100億円。
「ゼロ金利政策でもうけてるから3%はわずかで、理解はえられるのでは」 

【各界の反応】

税金をとられる銀行側はもちろん反対、銀行族の越智さんももちろん反対。

・金融再生委員長・越智美智雄
  金融機関の不良債権処理を早急に進める政府の施策と整合性がない。
  (公的資金を注入した所から、余計に課税したら意味ない!)
  金融機関の貸し出し態度もより選別的なものにさせる恐れがある。
・自治省
  対象を銀行に限定する事に問題があるのではないか→検討が十分必要
  急激に税負担増を求める事が、地方税法上問題がないかどうか
・宮沢蔵相
  自治省と同じ(検討が十分必要)
  各都道府県が独自に導入した場合、地域間で統一が取れなくなり混乱?
  特例交付金の存在(東京都に1300億円)及びその引き上げ示唆
・大蔵省
  地方税を所管する自治省の対応を見守る
・全銀協
  「銀行業のみを対象とした考え方は唐突であり、絶対反対」
  「他の自治体が追随しかねない」との危惧   


【外形標準課税の定義】

地方税、特に法人課税の税方式の1つで、建物の面積や従業員のように外からみて一目で分かるものを基準にして税金を決める特殊な課税方式。

【現状】

地方における法人税である法人事業税は「所得標準方式」を取っている。これは法人税・所得税などと同じであり、所得金額によって税額を決めており、税収が景気に左右され、不安定である。また赤字法人は税を負担しない状況で、応能負担の原則(払える人が払う)により課税されている。

【外形標準方式導入のメリット】

1 外形標準なので景気などに左右されずに安定した収入
   →都道府県の税収が安定化し、安定的な地方財源を確保
   →地方分権を推進
2 応益課税としての税の性格の明確化
  (所得の多少、黒字赤字にかかわらず、行政サービスへの対価として
   税を払うべき、との考え方)
3 税負担の公平性の確保
  (赤字企業にも課税が及ぶ事で、赤字を装う不透明な決算にも対応可能)  
4 経済構造改革の促進

【導入への課題(反論の理由)、解決法】

1 具体的には何を外形標準にするのか?
   ・付加価値をどのように算定するのか
   ・各産業間で付加価値率に差があり、産業間格差をどう調整するか
   ・地域間格差をどう調整するか 
2 納税事務負担を軽くしたいので、税制度の簡素化の工夫がいる
3 中小法人に対する一定の配慮が必要
   ・負担能力がない企業にも課税するのは問題なのでは
   ・赤字法人に対する課税(担税力の問題)はいいのか
     →税負担能力への配慮から、所得基準による課税との併用
4 雇用への影響についての留意が必要
5 適切な経過措置が必要
   →現行の所得標準と外形標準とを半分ずつ併用する方式

【望ましい外形基準例(政府税制調査会による)】

「簡素で納税事務負担が小さな仕組み」「事業活動を適切に表すもの」を基本コンセプトとし、税率は比例税率がよいと考えられる。具体的には以下の4つである。

1 事業活動によって意味出された「事業活動価値」
    (利益・給与総額・支払利子・賃貸料の合計) 
2 給与総額
3 物的基準(建設面積・減価償却費)と人的基準(給与総額)の組み合わせ
4 資本などの金額

【経済学的分析】

・地域間格差の問題
  基準は地域によって差が生まれる可能性
  →移転コストと税金の割引現在価値の大小によっては、税負担の少ない
   地域へ移転してしまう可能性
  →税収安定を目的にするも、結果として企業移転による税収減
  →動学的不整合の問題(cf.バックナンバー)
  ※移転コストは純粋な移転経費だけでなく、再雇用コストや移転に伴う
   ネットワークコストなど実際は膨大になるので、移転は現実的ではない 

・二重課税の問題
  東京都が導入し、追随する形で他都道府県が導入   
  →地方財源として広まる(地方財源安定)
  →緊急時のセーフティーネットは中央政府の支出
  →中央政府の増税(国債増発)の可能性
   中央の政策との整合性が取れない可能性
  →地方分権が進展してない状況での地方税増税は、合計の租税負担が
   増加する可能性

・不確実性のリスク回避
  試算によれば、資本金額約1億円以上の場合、外形標準にしたときの方が
  課税額は少なくなる
  →ねらいの1つは、景気(税収)の不確実性におけるリスク回避     
   (景気がよい時・悪い時によって税収が変動するより、その2つの
    ケースの平均よりも少なくてもいいから、確実な税収の方がよい)
  →景気がよい場合には、企業にはbenefitが発生するシステム
   (今までの所得標準だと、景気が良くなると、その分課税額が増加)

・中立性と公平性
  税については中立性と公平性のトレードオフが存在
  →最近の議論は中立性を重視する方向
  →中立性の観点からすると、安定財源確保のためには安定収入可能な
   外形標準課税の方が望ましい

・赤字法人の問題;解決法
 1 応益原則と担税力のバランスを取る必要
   →法人事業税のうち一部だけを外形標準課税に移行
    赤字中小企業への軽減措置など
 2「法人税逃れ」企業の存在
   →外形標準課税導入で「赤字」状態にするインセンティブはなくなる
    所得増加へのインセンティブ・スキームを確立
     例)フリードマン;負の所得税(補助金・累進税の組合せ)
   「法人税逃れ」企業の実態把握を強化して差別化 

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