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財政赤字解消の分析 (00.3.8)

 

 

ちなみに以前、政治的景気循環論の話を書きましたが、まさに2000年に大統領選挙があり、それに向けてかどうかは正確には分かりませんが、アメリカでは2500億円の減税が発表されました。また日本も今年の総選挙に向けてか、大規模な公共投資が今年の予算として発表されたところで、その理論は、相当程度説得的なようです。

以下では、まずアメリカが財政赤字を解消したプロセス、政策手段などについてまとめます。

【財政赤字解消へのプロセス】

90年代のアメリカは、単純にはいえませんが、以下のようなプロセスをたどりました。

不況→政府支出増(=減税)→景気回復→企業業績アップ→税収アップ→財政赤字解消

この減税する事でむしろ税収が伸びる関係をラッファーカーブといいます。1985年頃のアメリカは、経常収支と財政赤字という、いわゆる「双子の赤字」を抱えていたわけですが、大規模の減税などのサプライサイド政策を実施し、以後景気が回復して、ニューエコノミーの台頭もありましたが、企業業績がのび、単年度黒字にまでなりました。

今のアメリカの景気の持続的成長は、戦後最長になっていますが、上のroutineが多少形を変えて適用された事も一因だと思います。

 

【財政赤字解消の政策手段】

財政赤字の解消に向けての政策上の手段は、理論上は2つあります。沢山もらうか、払うのを減らすか、つまり「増税」と「財政支出の削減」です。ただAlicinaの研究によれば、財政赤字の解消に成功した国は全て「財政支出の削減」によるものと考えられています。

アメリカは1980年代後半の冷戦の終了で、軍事費の必要がなくなったわけです。そこで「大幅な軍事費の削減→財政支出の削減」となったわけです。

 

【構造改革について】

同時にアメリカは構造改革にも成功して、それが企業業績アップにつながったわけ
ですが、その要因をあげますと、

上にも書きましたが、レーガノミクスにより積極的な財政政策と規制緩和を進したこと。
米国企業が経営改革(リストラ)を行ない競争力や収益力の向上に努めた事
ボルカー前FRB議長が適切なマネーサプライコントロールを行ない、インフレ退治に成功したこと。(インフレなき成長へ)
プラザ合意によって異常なドル高を是正したこと。(経常収支黒字体質へ)

などでしょうか。

もちろん90年代に入っても企業のリストラは続けられ、不良債権問題も適切に処理されましたが、基本的には80年代における上記のような政策の効果が90年代になって花開いたと考えるべきでしょう。

 

【日本へのimplication】

知り合いの財政学者(の卵)と議論していた時、彼がふっともらしたのですが、現在の赤字規模は「あと3回くらいバブルが起きないとだめな規模」だそうです。その意味では、直接的な赤字解消方法はないのでしょう。

ただ、上記のまとめからのimplicationとしては、

景気が良くなり企業収益が増加したら、税収は増加する
増税は赤字解消につながらず、支出削減のみがとりうる政策手段
企業の構造改革は、企業収益を強化する

があります。

今の日本は1番上の視点を重視して財政拡大をしていますが、2番目の視点も忘れてはいけないでしょう。現在は政府が企業の下支えをしているニュアンスがありますが、それはずっと続けるわけにはいきません。そこで企業の努力が必要になりますが、それを喚起する政策を、財政支出を伴わない形で提供できればベストでしょう。

また最近、リストラなどで相当企業努力しているセクターもありますが、まだ遅々として進んでいないセクターもあります。その評価は株価などでも顕著になっていますが、そういった「変えるのが難しい」セクターについては何らかのショックセラピーも必要かもしれません。

こうした企業(サプライサイド)へのアプローチがゆくゆくは景気上昇へつながり、わずかではありますが、徐々に赤字解消へつながるとも考えられます。

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