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経済対策をめぐる議論−財政政策の有用性(99.11.19)

 

 

さて、先日政府より追加の経済対策18兆円が発表され、それに伴い、7.5兆円の国債発行も発表されました。政府のロジックとしては、「民需が完全に回復していない現在、政府支出による下支えをしなければいけない」というものです。様々なエコノミスト、特に野村総研の植草さんなどは30兆円規模!とかよく言ってますし、賛成する声も大きいようです。

一方で、国債の発行額は、今年1年で38兆円にのぼり、実はこれは過去最大額です。参考までに各種データをかくと、

・年間の政府の予算規模 81.8兆円
・日本のGDP(国内総生産) 約500兆円
・累積の債務(これまでの国債・地方債の発行残高) 約600兆円

となり、これからも明らかなように、日本の財政赤字は、先進国の中でも極端にひどい部類に入ります。なのに、ますます借金をしたわけです。

さて、話しを進めますと、これはバックナンバーの「財政政策の効果」でも書いた議論ですが、その効果はどれだけあるのか、ということが問題になるわけです。そこで、財政支出の反対・賛成の両方の意見を書きながら検討します。

【財政支出「賛成」の意見】

日本は構造改革期で各企業はリストラや在庫調整など収益が伸び悩む現状であり、そこは政府がお金を出して景気を刺激するしかない。
金融の公的資金のように、段階的にちょこちょこと出していると、結果的に最初に沢山出した時より多く出すことになる。
政府が景気の下支えをする、というアナウンスメント効果で、日本の株式などが堅調に伸びている。
2000年問題や情報インフラなど、政府がやるべき社会資本インフラの整備は沢山ある。

 

【財政支出「反対」の意見】

財政赤字の累積ははなはだしく、このままでは国際的な信用が落ちる。現に、否定されたがムーディーズは日本国債の格付けを下げると考えているらしい。
国債の大量発行により、需給悪化懸念のもと長期利回りが上昇して、設備投資などに悪影響を与える。
景気回復は、民間主導による自律的なものを目指すべきなのに、これではまた甘やかしているのと同じで、民間は自助努力などしない。
公共投資は従来から「ばらまき」型行政として批判されているが、その効率性などを考えずに額だけ決めて、とにかく消化しなくてはいけない、というようなやり方は早く是正するべきである。
介護保険や年金問題など、若い世代の将来負担はますます増大する中で、国債多発という将来世代へのつけまわしを拡大していいのか。
ここまで財政赤字が膨らむと、財政が均衡するのに時間がかかる。
企業は「景気が悪くなると政府が金を出す」という意識が定着してモラルハザードがおきる。

 

などです。
みなさんはどちらですか?

財政支出問題と切り離せないのが、歳入(政府の収入)ですが、一般に

不況→政府支出増→景気回復→企業業績アップ→税収アップ→財政赤字解消

という流れが考えられています。今回もそれを期待しているのでしょうが、なかなか企業業績が上向きにならない厳しい現実があります。

筆者は、基本的に財政再建路線(政府縮小)、ただし短期的な政府支出は景気へ正の影響あり、というマクロ主流派の意見と同じです。(学界のおける主流と、世間で言う「エコノミスト」の意見は全然違うことが分かりますか?)政府による役割は限定的にならざるを得ないわけですが、もちろん政府にしかできない機能は肯定していますので、そういった社会インフラ整備などは歓迎しています。ただし今の公共投資などはあまりにひどい現状ですので、改善すべき点は多いのです。(いずれ書きます)

今回も同様で「お金出せばいいんだろ」的な部分は本質的な意味がないと思います。(もちろん介護対策など有用な部分も盛り込まれていますが)我々が将来かぶる税金増などを現在にもってきて、こういった対策をうち出しているわけですから、国民も手放しに喜んでいるのではなくて、それが本当に意味のあるものなのか、を検討するべきだと思います。

また具体的には、18兆円の枠は準備しても、適宜必要なものにだけ支出していく、といった支出を極力抑えるシステムを構築しないと、従来通りの、まさに「ばらまき」になる可能性は高く、効率性は上がりません。そして一番肝心なのは、それで民間企業は息を抜くのではなく、このチャンスにより一層努力していくことだと思います。今回の18兆円の効果が終わった時に構造改革が終了していない企業は市場に淘汰されていくでしょう。

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