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2001.1.8

 

 

 

 

 

不良債権問題の本質 (98.12.6)

 

長銀の最大の債務先である日本リースの買収の件が進んでいる、と新聞報道があった。これは大変にすばらしいことであり、今後の不良債権処理や、会社の破綻処理の先例として期待がもてる。

というのも、会社更生法が適用になった企業は、生鮮食品と同じようなもので早く処理されれば価値は目減りしないが、長い時間が経過するほど腐る割合が大きくなってしまう。メーカーなどよりも、目にみえる形の設備を持たないリースや銀行などのサービス業はなおさらである。時間が経過すると、従業員は優秀なところから抜けていくし、優良な顧客も離れてしまう。培ってきたノウハウも同時に解体してしまう。この場合、ほとんど価値のない資産だけになる。しかし、主力の従業員が残り、顧客を維持したまま優れた企業に買収されるのであれば、その企業価値は最大限に保たれることになる。

さらに日本リースの場合は、破綻原因が不動産投資の失敗によるもの、との見方が支配的である。バブル以降、日本企業が悩まされていることであり、この損失が決定的なものになってしまった。しかし、日本リースは日本有数の水準のリース事業の担い手であり、その人材やノウハウが優秀であることは確固たる事実である。すなわち、不動産投資に失敗したことで、リース部門における企業価値も一緒に失うことは大きな損失なのである。企業は1度バラバラにするとその価値が戻ることはない。そして、企業価値を維持して第3者にできるだけ高く売却することで、債権者である金融機関にとっても融資による焦げ付きを最小に抑えることにつながり、従業員も雇用が確保される。「リース部門だけ売却」というメリットは非常に大きいのである。

このように不良債権問題は、破綻した時点で全てが終わってしまったかのように取られがちだか、重要なのは、破綻が明らかになった後の対応である。価値を維持したまま主要部分の売却に踏み出している日本リースは、成功事例であり、そうした対応ができないまま消滅してしまった企業は失敗例であるといえる。三洋証券はその例であり、すぐ売ればある程度の価値があったが、ずるずるいったせいで、ほぼ無価値になってしまったのである。その意味では、そこのスピードと決断が要請されることになる。

長銀も本来であれば日本リースと同じくらい海外の金融機関にとって高い価値の企業のはずだ。であるならば、判断を早急にして、優秀な人材やめぐまれた顧客が流出する前に対応すべきである(すでに優秀な人材は流出をはじめているが)。いたずらに対応を遅くして、結局価値のないものにして切り売りするようなことになれば、そこでも大きな損失が発生することになる。

日本は企業の破綻に対しては、完全清算でのぞむパターンが多いが、再生を指向して、事業継続をコーディネートする手法が取り入れられることを期待したい。

【まとめ】

破綻する企業が相次ぐが、破綻したからといって企業価値の全てがただちに消滅するわけではない。優良な部分はスピードある対応をして、最大価値額で売却することで、不良債権額も最小になり、人材・顧客を含めたその企業価値の継続が可能になる。この方向性は今後取り入れるべきである。

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