0金利政策とその解除の分析(00.8.24)
【0金利政策とは】
■日銀がオーバーナイト・コールレートの誘導水準を0%にすること。
# コール市場:民間銀行が資金を借りるマーケット
# オーバーナイト・レート:一晩だけ借りる資金
■効果としては、代表的なチャネルとして以下の2つがある。
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金利が0%なので、借りる方(銀行)としては借りたいだけ借りる事ができ、銀行への資金供給は潤沢になり、世の中へ出回るマネーが増える。それによって経済活動が活発になり、設備投資なども増加する。 |
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世の中のお金が増える事は物価が上昇する方向に作用するので、デフレ(物価下落)傾向をストップし、インフレ方向へ是正できる。逆に金利を上昇させると出回るマネーが減り、デフレ方向のインパクトを与える。 |
# デフレスパイラル:「物価下落→収益低下→賃金低下→消費需要減少→
# 物価下落」という悪循環のこと。
■具体的な誘導方法は、日銀によるコール市場への潤沢な資金供給である。常にマーケットの資金需要より1兆円多い資金を提供することで、金利を0%水準に保っていた。直接金利を設定するわけではない事に注意。
【解除(0金利解消)しろー、という議論の根拠】
■金利が0%というのは異常な世界であり、早期に是正されるべき。
■現段階においてデフレ懸念は払拭されており、金利上昇によるデフレ方向へのインパクトは、あまりないと考えられる。(日銀はこれを主張)
■重要ショートコラム 日銀の独立性の確保
バブルが起きた主要因の1つに80年代後半の日銀の低金利政策があります。これは「米80年代後半:ブラックマンデー(株価暴落)→円金利が高いと資金が日本に流出する可能性→米:日本に低金利を要請」という背景のもと日本国内には低金利でマネーがじゃぶじゃぶ流れ、資産価格(株・土地)が上昇し、同時に甘い審査のもと不良債権が増加しました。
当初の金利政策は政府の圧力で低金利にせざるをえなかった日銀ですが、資産価格の急上昇に伴い、慌てて金利を上げたところ、バブルが崩壊するきっかけをつくったわけです。
これらの教訓を元に、日銀の独立性が叫ばれ、去年の日銀法改正で独立性が確保されました。そして今回は速見総裁以下、利上げを示唆しています。ところが「将来のことは考えないで、とにかく今の景気だ」というお約束の政治家の人達が利上げには反対し(その議論は以下で解説します)、色々なパフォーマンスをするわけです。
つまり、ここでまた利上げを見送るようなことがあれば、またもや日銀は政府のいいなりになった事になり、結局独立性など確保されていないとしてマーケットからの信認を失う事につながる危険性があったわけです。さらに今回は今までの利下げから一転する「利上げ」であり、金利政策の大きな転換点です。それもあって日銀は事前のマーケットとの対話を重要視してきたので、それを覆すことはつらいし、逆に対話通り「利上げ」すれば日銀や金融政策に対する信頼度が増すわけです。
■金利を上げておけば、また「利下げ」という政策パッケージを持つことができる。0%だとこれ以上下げられないので、手詰まりのまま。
【解除反対(0金利すえおき)じゃー、という議論の根拠】
■まだ日本経済は自律的な回復過程ではなく、ここで金利を上昇させたら、デフレ傾向になったり、資金需要が減るなど経済成長に悪影響が出る。(これは1つの見方であって、その根拠が正しいとは一概にいえない)
■膨大な国債残高など財政政策が行き詰まっているので、残るは金融政策でお金をジャブジャブ使うしか政策手段がない。
【最終的な結論】
■0金利を解除し、誘導水準を0.25%に引き上げる。
■政府が、日銀の政策決定会合において議決を次の会合まで伸ばすように求める「議決請求権」も否決された→独立性の確保
■個人的には、今後の政策の幅が広がる、という観点から利上げには賛成。利上げとはいえ0.25%程度なので、インパクトは大きくないと考える。
【マーケットの反応】
■前日よりすでに折込済みで、会合の前にすでに短期金利は0.24%になっていた。
■利上げに伴う実体経済への影響はそれほどない。
・普通預金金利 0.05%→0.10%
・変動金利型住宅ローン金利 0.125%引上げ(年に7000円ほど)
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