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━━ Economics Today ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

!!使える!!経済の基礎知識から応用まで
Economics Today
1999/12/3号    

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みなさん、こんにちは。片山です。
寒い毎日が続きますが、いかがお過ごしでしょう。

今回は、政治と経済のからみを、政治家の行動という側面から分析します。
専門的には「公共選択論」とか「政治経済学」といった分野になります。
そんなに難しくない話ですし、面白いケーススタディも書きますので、
読んでみてください。

裏話としてノーベル経済学賞の話しを書きます。
では。

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■目次
1 政治的景気循環
2 ノ―ベル経済学賞の裏側
3 編集後記
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1 政治的景気循環
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最近話題の介護保険制度は、自民党は当初保険方式(見た目の自己負担大)を
4月1日から導入するという方針だったが、自自公連立の維持なども考え、
税方式(直接的な自己負担が小さく見える)へと変換した(正確には半年間の
凍結という先延ばし措置をとった)。以下では、こうした政治の動きには
何か一貫した理論があるのか、それは経済とどう関連するのか、を分析する。

政治経済学のポイントは何点かあるが、その1つには政治家の目標設定として
「政党は政権につくことがその効用を最大化する」と仮定することである。
その根拠は、政権につくことで様々なレントをえられたりする事などである。

これを念頭において、選挙について考察する。すると、選挙に勝つためには
選挙前に一時的に景気をよくして、現在の政権の支持率をあげる必要があり、
選挙後は、しばらく評価の場がないことを考え、引き締め型の政策で財政を
立て直すことになる。まとめると、

 ・選挙直後には、自由度が高く厳しい経済政策が可能になる。
 ・選挙直前には、放漫な経済政策になることが多い。

これが政治の戦略的行動である。こうした根拠により、選挙に基づく政治的な
景気循環(選挙の前には景気がよくなる)があるといわれており、アメリカ
では選挙の直前になると財政政策が放漫化するという実証研究もある。

また保守政党は小さな政府を目指し、リベラル型政党は、福祉型の大きな
政府を主張するが、選挙の結果リベラル型が勝利して、結果として大きな
政府になるのであれば、政権党である保守党も「赤字」という「つけまわし」
をするインセンティブをもつことになる。このようにして景気循環がおこる
プロセスも考えられる。

今回日本で18兆円の経済対策が実施されることになった。これは景気浮揚策
なのはもちろんであるが、来年1月ともいわれる衆議院の解散総選挙を
みこしての財政政策、政治的景気循環の一種ともとれる。
またさきほどの介護保険制度の変更も、自自公連立を維持し、世論の批判を
かわして、政権を維持するための戦略的行動ともいえる。

さてアメリカはどうであろうか?
アメリカでは、クリントン政権が安定的に長続きしているが、その背景には
こうした政治的景気循環のプロセスの興味深いインプリケーションがある。

クリントン政権の前のブッシュ政権は1992年まで続いたが、選挙前には
この理論と整合的に、放漫な経済政策を実施した。
しかし残念ながら、選挙の前までに効果がなかなか表れず、景気はよく
ならなかった。そこで、対立候補であったクリントンが勝利したのである。
これはブッシュ政権にとっては戦略的な失敗例であるが、なんとクリントン
政権が発足してから、ブッシュ政権の経済政策の効果が出てきたのである。
それが契機となってアメリカは未曾有の経済成長期にさしかかり、クリントン
政権はブッシュ政権の政策に「ただのり」する形で経済立て直し・成長に
成功し安定して2期目の任期を獲得したともいえる。

またアメリカは今年度大規模な経済政策を実施したが、これも来年度の
大統領選挙をみこした政権党の戦略的行動とみることもできる。

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2 ノーベル経済学賞の裏側
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今年度のノーベル経済学賞は国際経済における研究で有名なマンデルが受賞
したが、裏話をひとつ。

この賞の選考委員会には、2,3年前まであるスウェーデン人が仕切っており、
彼が保守的であったため、受賞者は伝統的な経済学にのっとった保守的な学者
が多かった。
リベラルな人はあまりもらえず、逆に「保守的な人であれば、ブキャナンでも
もらえた!」と揶揄されたほどだった。
ブキャナンはいわゆる公共選択の理論で有名であるが、当時はほかの分野で
より先進的な研究をしていた研究者は多数おり、ブキャナンの受賞は予想を
覆すものであったのである。

しかし、最近ではその人がようやくいなくなり、バランスの取れた受賞者に
なってきたようだ。

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3 編集後記
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政治の役割はますます大きくなっていますが、社会厚生としてはどのような
形が望ましいか、はまだ議論の余地があります。GDPの成長だけが善し悪し
の指標でもないですし、難しいところです。

また政府の失敗と同様に官僚の失敗なども理論的には研究されており、興味
深いところです。機会があったらいずれふれます。

次回は、前の号で書いた財政政策や国債などについて、補足的に書く予定
です。ではまた次号で。

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