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Economics Today
1999/4/10号
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みなさん、こんにちは。片山です。
随分とどこおっていますが(申し訳ありません)、前回に続き、
政策のマーケットに与える影響ということで金融政策を取り上げます。
さて明日は都知事選投票日ですね。
僕は都民なので投票に行きますが、誰がいいのかな、と頭を悩ませています。
個別に応援する政党はないのですが、なんかどの街頭演説を聞いていても
他の候補の悪口が耳に残り、若干不快になる事が多いです。
先日明石さんの応援演説を歌手の松山千春さんがされていました。
「うーん、つらい。」というのが正直な印象でした。
何がつらいか、は具体的に書くと多少乱暴な私見になりますので控えますが、
本当に明石さんの事知ってるのかな、という疑念が伝わってくる演説でした。
「有名な人が応援してるんだ」というだけで、その人に投票する層には
有効でしょうけど、実際その有名人が、候補者のどこに共感して
応援しているかに注目している層から見たらつらい、という意味です。
重要な戦略なんでしょうけど。
明石さん並びに関係者の方に誤解のなきよう断りますが、
これは明石さん個人に対する誹謗中傷の類ではなく、各候補者共通の
選挙活動やその戦略全般に対する感想ですのでご理解ください。
たまたま明石さんのそれを思い出しただけです。
僕自身、明石さんに投票する可能性は低くないです。
さて話しが飛びましたが、本文です。
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■目次
1 マーケットの動き2−金融政策の影響
2 金融再編の方向性−地銀再編
3 編集後記
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1 マーケットの動き−金融政策の影響
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最近日本銀行による金融緩和政策がとられている。これは量的緩和も視野に
入っており、市中に流通する貨幣量の増加が政策課題である。
具体的には、公定歩合の引き下げ・低水準での維持(現在は0.25%で、
これは史上最低)や、短期金利の低め誘導などの金利政策を実施している。
市場の原理としては、乱暴であるが「利子率が低くなる→みんな沢山お金を
借りようとする→貨幣が出まわる」と考えられていることが多い。
このようなロジックを仮定すると、利子率の低下による実体経済への期待
されているチャネルは、以下のようである。
1。 株式などでの運用需要を増加させる、すなわち株価が上昇する。
ただし最近の日本の株価の急上昇は、この要因の他にも、米株式市場の
先行き不安感による外人投資家の運用先のシフトなども要因といわれている。
昨日、ユーロの中央銀行が利下げを発表した事を受けて、英仏でも
株式市場が史上最高値をつけた。
2。 様々な議論があるが、オーソドックスな経済学では、利子率の
低下は設備投資の増加につながる(設備投資は一般に利子率の減少関数と
考えられている)といわれ、設備投資増は国民所得(GDP)を増加させる。
「景気がいい・悪い」の指標は一概には言えないが、
一般的には「四半期GDPの前期比」などGDPが中心になることが多い。
すなわち景気に影響を与えるのである。
3。 新規国債の需給悪化懸念にともなう長期金利上昇の抑制。
前回も書いたが、国債が沢山発行されると余るのではないか、
と予想されその利子率(長期金利)が高くなるのである。
長期金利が上昇すると、投資意欲が減退するので問題視されている。
4。 利子率が低下すると海外に資金がシフトして円安になる。
これは輸入財価格の上昇をともない、物価の上昇を誘発する。
これは最近のデフレ傾向を牽制する。
しかし2に関しては、現在の日本は、過剰設備やストック調整(在庫が
あまっちゃって大変)の状態ともいえるので、従来では景気回復を引っ張ってきた
設備投資がなかなか上向かず、それも問題視されている。
そして景気を下支えしていた消費も最近は回復したものの1時期は落ち込み、
戦後初の「経済成長率がマイナス」という事態を迎えることになった。
(正確には、1976年のオイルショックの際にもマイナス成長であったが、
これは第3次中東戦争という1時的かつ地域的な外的要因によるものである)
また昨年夏にはポール・クルーグマンによる「Japan's trap」が
物議を醸したが、これは日本が今「流動性のわな」に陥っており、それから
脱却するには量的金融緩和が必要であり、また利子率を下げても効果がない場合は
軽いインフレをおこし、さらに実質利子率を下げるべきだという調整インフレ論
である。
これは元重先生によって日経の経済教室で紹介された。元重先生によれば
「こういう議論もある、と紹介しただけ」とおっしゃっていたが、日本の
経済論壇では調整インフレ論の急先鋒のように扱われ、某雑誌では「伊藤元重、
調整インフレに学者生命をかける」というタイトルまで現れた。
もちろんこれは大うそ。(笑)
以下でこの調整インフレの根底にあるロジックを簡単に紹介する。
マクロ経済学でよく使われるフィッシャー方程式として
(実質利子率)=(名目利子率)−(期待物価上昇率)
がある。この方程式の詳細の説明は省略するが、名目利子率が年率7%でも、
期待物価上昇率が9%だと、実はお金を預けても、実質的な価値は
へってしまうことになる。
そこでクルーグマンは、マネーサプライを増やしても効果が出ない流動性の罠に
陥ってる現在、名目利子率がすでにこれ以上下げられない水準に来ているので、
もう1つの変数である(通常は変数ではないが)物価上昇率を操作変数に
することを主張しているのである。
上記の式を見ながら考えていただくとすぐわかると思うが、物価上昇率が
上昇すると名目利子率が一定ならば実質利子率が下落することになる。
それによって経済にインパクトを与えよう、というものである。
また金利政策ではなく、実質的な貨幣量を増加させる、量的緩和という政策とも
ある意味では重なることになる。
しかし日本銀行は、長きにわたって「物価の安定=インフレ抑制」を政策課題に
しており、本来このようなインフレを直接指向した政策というのはアレルギーが
出るもののはずである。ところがその議論が出てしばらくしてから日銀の
調査統計局(主に経済分析をするセクション。優秀なエコノミストを抱えている)
でも真面目にとりあげられていたという。この事態は、その時点で他に打つ手が
なかったことを示している。
現在ゆるやかながら景気が底を打って、横ばいか上昇傾向にあるのは、
金利の低水準を指向した金融緩和政策を積極的にうち出したことも1因といえる。
それに対して、上記のようなインフレターゲティングや量的金融緩和は、
日銀の政策委員会でもいまだ議論されているが、ひとまずは金利の低め誘導
などを実施し、その成果を見極めているといえる。
前回議論した国債の日銀引受と同様、それが議論の対象になること自体、
現状の厳しさを物語っている。
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2 金融再編の方向性−地銀再編
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第2地銀の国民銀行が破綻し、ブリッジバンク(受け皿銀行が見つかるまで
経営を引き継ぐ)か長銀などと同じ、国の特別公的管理(一時国有化)の処理を
受けることがきまった。地域の地銀の再編が進む契機になると予想されるが、
再編には大きく分けて以下の2つの方向性が考えられる。
1 縦の再編
大手銀行との業務提携や合併を進めることで、資本基盤を強化し生き残りを
かける。住友銀行も大阪の地銀を吸収し(銀行名は失念)、地盤を強化した。
都銀にとって有効な手段であるが、地銀の財務体質など問題点が多い場合は、
合併といってもほぼ吸収合併になる可能性が高く、MBO(マネージメント・
バイアウト>買収しても経営陣や従業員はそのまま)にはなりづらい。
地銀は、合併とともに条件として新たなリストラなどが要求される事も
予想され、いずれにせよ厳しい経営が望まれる。
2 横の再編
地銀がそれぞれの得意分野に特化して、比較優位にもとづいて連携するもの。
第1地銀などはこのパターンが多く、結果としてスーパーリージョナルバンク
の登場が予想される。首都圏を除いたほとんどの各県は、主要な第1地銀が
1つ存在することが多いので、そうした有力地銀の連合となる。この場合
これまで以上に地域密着型の経営になるであろう。
以上であるが、もちろんこの両方が錯綜した再編となるであろう。
都銀の中にも海外から撤退し、国内に特化するものもある。不良債権処理
などで体力が低下している中、不採算部門は切りすて、高収益部門に特化して
体力を高めるのは、今後の競争勝ち残りのためには必須となるので、
互いの弱点を補完する意味での合併は有用である。
外資系金融機関では、ホールセール(投資部門)とリテール(商業部門)
という相互補完的な業務提携が一般的である。
地銀を含めた金融界の再編は今後も進むであろうし、その際思い切りと
客観的な情報分析が欠かせないツールとなる。
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3 編集後記
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長くなりましたが、金融政策についてはまだまだ議論の余地があります。
読者の皆さんの中で、日銀の政策委員会の会合について注目されている方も
多いとは思いますが、もし、今まで興味がなかった方はこれから軽く流し読み
してみてください。毎月1回行われ、その結果が新聞に載っています。
近いところでは4月9日の新聞にも載っていますが、今回の記事の内容について
理解が深まりますし、最近の動きを把握できると思います。
ではまた。
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発行者 :片山 健太郎
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