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!!使える!!経済の基礎知識から応用まで
Economics Today
1998/12/21号
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みなさん、こんにちは。片山です。
実は先週1週間、元重先生が12チャンのワールドビジネスサテライトに
コメンテーターで出ていました。
宣伝しようと思ったのですが、それもなんだろうと思ってとどまりました。
月曜日(14日)にはゼミの後みんなで大忘年会をして、先生も当然参加された
のですが、その後の番組は大丈夫だったのでしょうか。
僕は夜の11時には間に合わず見れませんでしたけど。(笑)
さて、みなさんからの質問やご要望が多数届いています。
ありがとうございます。大変励みになります。
極力返信していますが、ご要望についてはできるだけ早く
実現するよう努力しますが、何ともいえないというのも正直なところです。
その点についてはご了承ください。
また日債銀の特集はいま少しお待ちください。
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■目次
1 公的資金注入の理論的根拠
2 <基礎理論> ミクロ経済学1−異時点間消費1
3 編集後記
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1 公的資金注入の理論的根拠
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最近日債銀問題も含め議論に上る事が多い公的資金の注入について議論をまと
めてみたい。
前提として、銀行は金融システムを構築している重要な要素であり、信用収縮
(自分の資産が悪化すると、貸し出しをけずって資産を改善する。それがいわ
ゆる「貸し渋り」となる流れ)が一層加速すること、また信用を仲介している
ため、システミックリスク(連鎖的な倒産)が起きやすいこと、などから普通
の企業とは違い、公的資金を注入して、一時的にバランスシートを改善して立
て直す必要性については特に異論はないようである。
そこで、政治的な駆け引きも含み、公的資金注入に関しては、銀行の責任問題
(リストラや給料の引き下げ)や透明性の拡大などのいわゆる条件を付けるか
どうかが、焦点になっていた。
そこでその流れを、政治的な裏話を絡めながら見ていく。そして政策の流動性
と、政治的常識が次々に破られる時代であることを検証する。
10月14日に経済戦略会議の短期提言が発表された。
その内容は大きく分けると以下の3つになる。
1つは、銀行への資本注入を50兆円レベルでおこなう。その際銀行の責任問題
などとは切り離して考えるというものであった。条件を付けると話しが進まな
いため、責任は2、3年のうちにとる事にして、速やかに注入をすすめること
が不可欠、との見方である。
2つめは、10兆円の真水の政府支出をすることであった。短期経済対策では
公共投資や減税だけでなく、国で不良債権を買い上げたり、中小企業の融資枠
を増やすなどの政策も盛り込まれた。これはいわゆる「真水」の対策ではない
。機会費用のロス(その費用を他に使ったら何が出来るか、という考え方)や
土地の移転(不良債権を買い上げても所有者が移転するだけで、実質的にGD
Pが増大するのではない)などが考えられるからである。そこで、本質的な政
府支出である真水の政府支出を、効果が上がるレベルの10兆円規模ににするた
めには、財政支出全体が20兆円規模になる必要があるのである。
3つめは、金融問題の処理のための政府支出を確保することである。これも財
政支出の一部となる。
これらは必要な政策であるのは間違いないが、同時に年金などの社会保障の問
題もふくめ、中長期での財源の見通しを付ける必要性も浮上することになる。
そしてこの提言は実は10月7日に発表の予定だったという。しかし野中官房長
官からストップがかかる。民主党の枝野議員などから、公的資金はリストラや
引き当て(銀行は不良債権額に応じて貸倒引当金を積む必要がある。日本の銀
行はその引き当て率が低いことで知られている。そこで、その水準を高めるこ
とも必要とされる)を完了してから注入すべき、という強い政治的圧力がかか
ったからだという。また皆さんご存知のようにマスコミも、銀行の責任問題な
ど、訴えやすいテーマを追求するので、公的資金の無条件早期注入についての
世間的なコンセンサスはなかなかとられにくい状況であった。
そして「こうした政治的解決がなされてからの発表」というストーリーが描か
れる中、14日までの間に(正確な日付は失念しました)読売新聞にリークされ
ることになる。実は学者の間では「一刻も早く注入」という意見が支配的であ
った。それはクレジットパラダイムという考え方が根底にあって、それは銀行
の貸し出しと他の資産の間には不完全代替の関係が成立しているので、その貸
し出しを支えないとマクロ的にもたない、というものである。戦略会議の提案
の1つめもそうした考えにのっとていた。注意が必要なのは、別にこの議論が
責任問題をおざなりにするものではない、という事である。当然銀行の責任は
重く、将来的に当該銀行は実はハードランディングになることが予想される。
ただし、それを恐れて注入が遅れると取り返しのつかないことになるため、そ
の問題は別の議論として扱うという事である。
この後実際14日発表した際のマスコミの反応は「新鮮味がないのでは?」とい
うものだったという。すなわちリーク以降、マスコミの間では無条件注入が当
然の流れになっていたのである。そして戦略会議の提案と完全に一致はしてい
ないものの、基本的なスタンスは同じ政策が取られることになる。たった1週
間で政策の常識が変わり、政策はまさに動くものであるというのを目の当たり
にすることになったのである。
以上見てきたように、公的資金の注入には様々な議論があり、どれが正解かは
なかなか判断しずらいが、唯一間違いないのが「スピードとの勝負」という意
識の必要性である。正論をふりかざして実態を見失うと、経済的な損失はより
多大なものになってしまうかもしれない。
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ご意見・質問などは気軽にこのアドレスに----katayama@netjoy.ne.jp
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2 <基礎理論> ミクロ経済学1−異時点間消費1
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今回は国際貿易の分野にもちょっと入りますが先週の所得効果と代替効果の概
念を使ってより応用の分野を解説したいと思います。
まず現在(1期)と将来(2期)という2期間からなるモデルを考えます。
それぞれの期で所得と消費があり、1期でお金を貯金すると、それに利子率が
ついた分だけ2期の消費に回せます。
2期以降がないため、2期で全てを消費してしまいます。
今回は簡単な数式を使います。
1期の消費をC1、所得をY1、2期の消費をC2、所得をY2、利子率をrとします
所得Y1、Y2はすでに決まっているとします。(所与)
もし貯金する場合、その額はS1=Y1−C1になります。
それに利子がついて将来消費するので2期の消費は
C2=Y2+(1+r)(Y1−C1)・・・・・・・・・1
となります。
これを違う形で書くと、
Y1+ Y2/1+r=C1+ C2/1+r ・・・・・・・・・・・2
Y2−C2=−(1+r)(Y1-C1) ・・・・・・・・・・・3
となります。(分数はこう書くと変な感じですね)
これが異時点間消費の予算制約線となります。
ここでY1−C1がプラスなら、貯金していて、マイナスなら借金していることが
分かるでしょう。
そしてこれを1国レベルにすると、Y1−C1やY2-C2というのは、実は経常収支
にあたることになります。
すなわち1期での貯金とは、海外にお金を預けるようなものですから
海外債権の純増、すなわち経常黒字、
そして1期での借金とは、海外からの資本などの流入ということですから
それはすなわち経常赤字ということになります。
ここでのポイントは、1期で経常収支が黒字の場合には、必ず2期では
経常収支が赤字になることです。(式3を参照)
同様に1期で経常赤字の場合は必ず2期で経常黒字になります。
日本は現在大幅な経常黒字国であり、アメリカは経常赤字国です。
この点について、アメリカはいわゆる「貿易摩擦」という形で日本への輸出や
日本からの輸入について政治的な圧力をかけてきます。
基本的な考えは、「経常赤字はだめ」というものです。
その元に、例えば輸入数量制限(日本の自動車の輸入は数量的に制限する)や
日本への輸出の自由化(牛肉やオレンジなど)を政治的目標として推進してき
ました。
しかし、上の議論で言えば、そこまで経常収支の黒字や赤字は問題ではないこ
とになります。現在の経常黒字は将来の経常赤字につながるからです。
日本も今は経常黒字ですが、いずれ赤字になるかもしれません。
そして、それを視野に入れた政策をしなければいけません。
さて、以上が異時点間消費の基礎知識ですが、次回はこの応用について議論し
たいと思います。
みなさんにも考えておいて頂きたいですが、「r」を変化させたことによる効
果はどのようになるでしょうか。
C1に与える影響について、代替効果と所得効果に分けて考えてみて下さい。
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ご意見・質問などは気軽にこのアドレスに----katayama@netjoy.ne.jp
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3 編集後記
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さて毎週日曜日の朝に届くように配信していくつもりですが、
今週は筆者が土曜日から日曜日にかけて朝まで忘年会という
ハードなスケジュールのため1日遅れになってしまいました。
まだなんかボーとしていますが、送ります。
今回の基礎理論は難しかったかもしれませんが、余裕のある方は
紙と鉛筆でちょっと数式をいじってみるとイメージが湧くかもしれません。
そして来週は、代替効果と所得効果を使って、発展途上国の政策まで
議論してみたいと思っています。
もう少し柔らかい話題も取り入れようかな、とも思っています。
ではまた来週。
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○メールマガジン「!!使える!!経済の基礎知識から応用まで」1998/12/21
発行部数:2136部
発行者 :片山 健太郎
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