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        !!使える!!経済の基礎知識から応用まで
                Economics Today
                  1998/12/13号 
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  登録された方へ送付されております。ご購読有り難うございます。
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みなさま、こんにちは。片山です。
段々寒くなってきましたね。

ご存知の方が多いと思いますが、日債銀が特別公的管理に入りそうです。
日債銀とは、日本債券信用銀行のことです。今の状況は簡単に言えば、
政府が「日債銀さん、あなたもう駄目だよ」と通告した後、「我々に
任せなさい」といって、日債銀を政府の管理下に入れる、という事です。
日債銀については、以前から噂されていて、なんで長銀が先にいったのか、
ということまで言われてたくらいですので、当然の結果ともいえます。
まだ方式が完全には固まっていないのですが、非常に興味深いトピックです。
今回はちょっとまだ材料が足りないので、次週か、特集で扱いたいと思います。

さて創刊号は予想以上の反応を頂きました。
ありがとうございました。

創刊号については反省するところもあり、満足しているところもあり、結果と
して今しばらくは、構成が号ごとに微少変化していくかもしれません。ご了承
ください。色々なコメントを頂きましたが、大きく分けて以下の2つに集約で
きます。

1 オーソドックスな理論解説、用語説明などのいわゆる基礎部分の拡大
2 裏話しなどを含むより一層突っ込んだ議論への期待

これらは、いずれも併存する方向性だと思っています。
1に対応して、今回から数回にわたり、ミクロ経済学・マクロ経済学の分野か
ら、現実経済について適用しやすい概念をトピック的にいくつか紹介していき
ます。数式やグラフの使用が困難なので、分かりやすく言葉で説明したいと考
えています。

いわゆる基礎分野以外でも「こんなトピックを取り上げて欲しい」というもの
がありましたら気軽にメールを下さい。可能な限り応えます。

今回頂いたメールでは「金融工学」関連の要望が多かったのですが、日曜日の
NHKスペシャル「マネー革命」でその特集をしています。それをご覧になっ
ているのかもしれませんが、(僕は見てないのですが)より分かりやすい形で
金融工学の実用であるヘッジファンドの問題と共に近いうちに1度まとめたい
と考えています。

1杯のコーヒーと15分の時間があれば、充実して読みこなせる内容と自負し
ています。じっくりと読んで下さい。
いつも前書きが長くて申し訳ありません。
では。

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■目次

1 不良債権問題の本質−企業と株価
2 <基礎理論> ミクロ経済学1−代替効果と所得効果
3 編集後記

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1 不良債権問題の本質−企業と株価
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前回の記事に関する読者の方からの質問で、多かったものについて答えると
共に、Q&A方式でポイントをチェックします。
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Q 企業が破綻しているとは何なのか。

A 基本的には、「債務超過」か「流動性の確保が困難」の状態といえます。
「債務超過」とは、その企業の資産よりも負債の方が大きい状態です。簡単に
言えば所有している土地や、資産(工場など)、預金などの資産を合わせても
借入金など将来払わなければならない負債総額の方が大きい時です。だいたい
ゴマカしたり、あるいは、正確に負債と資産の総額を把握するのが困難なため
社会的には明らかにならないわけですが、それがばれると債務超過となります。
今回の日債銀の「債務超過認定」というのは、あまりに債務超過が明らかだか
ら政府が「そろそろあきらめなさい」と通告したということです。
債務超過が明らかになれば、直ちに破綻となり、企業をどう処理するかを考え
ることになります。

「流動性の確保が困難」とは、日々の企業行動に必要な資金を調達するのが、
困難になってきたという意味です。企業は、資金を常に現金としてを手元に置
いているわけではありません。定期預金もあれば、証券の形態もとります。
そこで、銀行などは一泊二日の借金などもして毎日の資金を確保しています。
その際利子を払うわけですが、危ないと噂される企業は高い利子率を払わない
と、貸してもらえなくなるわけです。そして高い利子を払っても、どこも貸し
てくれなくなると、それはすなわち市場が退出を命じた事になります。長銀や
北海道拓殖銀行などはこちらです。(結果として債務超過にもなっていました
が)当然企業活動を続けられないので破綻となります。

最近の傾向としては

債務超過の噂が流れる→市場で流動性が確保出来なくなる→破綻手続きを取る
→検査すると債務超過であったことが明らかになる

というパターンが多いようです。
---------------------------------------------------------------
Q 企業価値とは一体何なのか。

A 通常企業価値は、市場での評価ということで株式市場の評価、すなわち企
業の発行済み株式の総額ということになります。

マーケットの判断というのは、現在だけでなく、将来時点を織り込むなど
それなりに複雑な決定様式と考えられています。
また、不特定多数の意思決定者が参加すると仮定されているので、その企業の
体力を相当程度反映していると考えられます。
---------------------------------------------------------------
Q 株価は、本当にその企業の価値と考えていいのか。

A 必ずしもそうとはいえません。日本のマーケットが、優良な企業の株価が
高く、劣悪な企業の株価が低い、といった純粋なマーケットメカニズムに順応
しているか、という構図は必ずしも成り立ちません。

基本的には、上述のように体力を相当程度反映していると考えてもいいのです
か、例えば、機関投資家(大量の資金でとにかく儲けたい)のキャピタルゲイ
ンの利鞘確保のための売り(株価の動きだけに注目して、安く買って高く売り
たい。すると劣悪企業の株が安いのでそれを買う。それで一旦その株価が上昇
をはじめ、ちょっとずつ買い足すとまた上がる。そしてある程度あがったとこ
ろで最初に買っていた株を売る。こうして、その企業のファンダメンタルズが
そんなによくなくても株価が高くなることがありうる)などで、真の企業価値
を決定する仕組みとしては、歪みが入っている可能性があります。
---------------------------------------------------------------
Q ある企業がつぶれそうで優秀な人材が流出しても、その人材が他の企業で
活躍するのなら社会全体で損してないでのでは。

A 正確ではないですが、損失が発生する可能性はあります。
ここでは、人材の流出自体が問題なのではなく、それによってその企業が存続
できなくて保存価値が失われていくこと、が問題点になります

企業がその価値を保存したまま存在していることで、社会的にも厚生が保たれ
るわけです。しかしながら優秀な人材が流出してその企業価値が下がり、結果
として破綻して、ほぼ無価値になってしまうと、それこそ社会的な厚生が減少
している、すなわち損失が発生していることになります。

人材の流出に関しては、外資系金融機関には、ディーラーなど、「外資ゴロ」
と呼ばれる集団が存在するほど人材の流動化が激しく、それは、それなりの
弊害はあるものの一般的には悪いことではありません。

日本の労働マーケットはまだまだ発展の余地がありますが、それでも正当な評
価とヘッドハンティングが進んでいるので、優秀な社員と目される集団は、常
にそのターゲットに上がっているはずです。優秀な人材がその実力を最大限に
活かされる職場で働くことは、社会的な厚生を高めますので、その流れ自体は
促進する必要があります。

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ご意見Aドレスにお気軽に→ katayama@netjoy.ne.jp
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2 <基礎理論>ミクロ経済学1−代替効果と所得効果
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みなさんが飲みに行くとします。
いつもある予算の範囲内で、焼酎とビールを楽しんでいます。
いきつけの店は、焼酎は1杯400円、生ビールは1杯500円。
できるだけ酔う組み合わせで飲んでるとします。
でも焼酎も好きだし、ビールも好きなのでどちらも楽しみたいとします。
ある日いつもの予算を持って行ってみると、ビールが1杯600円になって
いました。さて、みなさんはどうするでしょうか。

まずビールに関しては、相対的に値段が高くなったので「いいや」となるはず
です。そして今までと同じだけ酔うには、ビールを減らして、その分安い焼酎
の量を増やすことになります。
また同時に、ビールを飲めば、(飲んだ本数)×100円だけ、相対的に自分
の予算が今までに比べて減るようなものなので、例えば普段10本飲んでいた
ら、1000円分は予算が減ることになります。そして、その減少分の中のい
くらかはビールの分になるので、さらにビールの本数は減ると考えられます。

一方焼酎はどうでしょうか。
ビールが高くなったので、相対的に安くなった焼酎の需要は増えます。
上に書いてあるとおり、同じだけ酔うには焼酎を増やすことになるわけです。
しかしながら、ビールの価格上昇のせいで予算自体が目減りしているので(上
述)、その意味では実質的に使えるお金が減って焼酎の本数も減るはずです。
結果として、焼酎の本数が増えるかどうかは分かりません。

<用語解説>++++++++++++++++++++++++++++
需要:経済学では何かを消費する時、その量を「需要」という。これは消費者
サイドからの量であり、生産者サイドから考えた量は「供給」という。

財:目にみえるもののこと。これを手に入れるためにその価値に等しいお金を
支払うことになる。サービスは財には含まない。(特に「サービス財」という)
2財モデルとは、2つの財を考えたモデルということです。
++++++++++++++++++++++++++++++++++

このような2財モデルにおいて、ある財の価格の上昇よる需要の変化を分析す
ると、上に書いたように、まず価格体系の変化によって財の需要が変化します。
これを「代替効果」とよびます。(この場合では、「ビールが高くなったから、
やめてその分焼酎買おう」という効果)
次に起こる、実質所得の低下による財需要の変化を「所得効果」とよびます。
(「ビールの値段が上がったから、予算自体も目減りするから焼酎もどうしよ
うかな」という効果)

まとめると、ビールの価格上昇によって

代替効果 所得効果 全部効果(結果)
ビールの需要 − − −
焼酎の需要 + − ?

となるわけです。
この「代替効果」と「所得効果」の概念を使うと、色々なことが分析できます。

例えば、石油ショックの際の企業行動を考えましょう。
もちろん、かなりの仮定と簡単化が前提になりますが、その企業は石油を使っ
た財と、使わない財を一定の予算内で生産しているとします。そして、石油シ
ョックで、石油の価格が急騰した場合を考えます。

上での議論を適用してみます。すると石油を使った財がビールにあたり、生産
量は減少することになります。一方で石油を使っていない財は焼酎にあたり、
表の「?」からも分かるように、単純に生産を増やすとは言えないわけです。

次にこれはまず皆さんに考えて頂きたいですが、米のケースを想定します。
米の価格が上昇すると、我々普通の消費者の「代替効果」「所得効果」による
米需要の変化はどうなるでしょうか。また、米の農家の「代替効果」「所得効
果」による変化はどうなるでしょうか。

正解は次回、とかするといやらしいので書きます。(笑)
まず米の価格が上昇したことで比べるのは、それ以外の穀物ということになり
ます。(小麦とか大豆とか>パンやおそばをつくる)
消費者は「代替効果」「所得効果」ともに米に関してはマイナスになります。
これはいいと思います。

米農家に関してはどうでしょうか。実は、これは今までとは異なります。
代替効果は、相対的に高くなるわけですから、確実に米の需要が減ります。
一方の所得効果に関しては注意が必要です。
米農家は米を生産して販売しているので、米の価格が上昇すると、その分所得
が増加することになります。すなわち実質所得が増加するので、米の需要がふ
え、所得効果はプラスになります。
よって、全体としてどうなるかは定まりません。

このように自分がその財をマーケットに供給する立場にある時、その財価格が
上昇すると、需要が増加する可能性があります。

以上で議論してきた「代替効果」「所得効果」は、価格変化を考える時には、
欠かせない概念になっています。これを応用すると様々な話しが出来ますので
それは次週にしたいと思います。

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ご意見アドレスにお気軽に→ katayama@netjoy.ne.jp
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3 編集後記
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ふう、またまた長くなりました。
分かりやすかったでしょうか。
申し訳ありませんが、今回は時事ネタがあまりありませんでした。
日債銀問題については、詳細が分かり次第、増刊号で書きたいと思います。

基礎理論のところは、最初だけに長くなりましたが、
基本的な概念を1回に1つずつ紹介したいと思います。
あまり、このコーナーは時事とは関係なくなるかもしれません。
興味がない方は読まれなくてもいいかもしれません。

ではまた。

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○メールマガジン「!!使える!!経済の基礎知識から応用まで」1998/12/13
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