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!!使える!!経済の基礎知識から応用まで
Economics Today
1998/12/6号
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■目次
1 筆者紹介
2 不良債権問題の本質−破綻以降
3 編集後記
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1 筆者紹介
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みなさまはじめまして。片山健太郎ともうします。現在東京大学経済学部4年
で、来4月から大学院に進学を予定しています。現在、学部において伊藤元重
研究室の代表をしており、日々精進しようと心がけて(!)います。ご存知の
通り先生は、小渕首相の諮問機関である経済戦略会議のメンバーであり、かな
り多忙のご様子なので、学生にかまっている暇などないんだ、という感じです
が毎週ゼミは欠かさずいらっしゃっています。
さて、このメーリングマガジンでは、最近の経済問題について一定の経済学的
なアプローチを、できるだけジャーナリスティックにならない形で、議論でき
たらいいな、と考えています。またその前提になる基礎知識にも可能な限り触
れると共に、分かりやすく簡潔にエッセンスを指摘することで、経済に関して
知識の蓄積があまりない方でも、気軽に読めるマガジンを目指したいと思いま
す。(僕自身、知識の蓄積に自信ないので偉そうなことは言えないのですが)
その背景には、元重先生のゼミでの小話(実は先生が考えのたたき台にされて
いるかも)を何らかの形にまとめたい、あるいは片山自身の考えるところをシ
ョートセンテンスでいいのでまとめる場が欲しい、といったことがあり、レベ
ルとしては日経新聞社説から経済教室くらいを目標にしたいと思っています。
ただし、週刊予定なため、アイディアはあるものの、やや断片的な、文章とし
てはコメント程度の長さになるものも多いかもしれません。ご了承頂きたいと
思います。またグラフが使用出来ないため、文字どおり見えにくい議論になる
かもしれませんが、みなさまの空間的なセンスでカバーして頂けたら幸いです。
内容に関しては、適宜みなさまの要望に応える形にしたいと思います。具体的
には、オーソドックスなミクロ経済学・マクロ経済学のトピックの解説、新聞
記事の解説、なども今後加える可能性があります。
またみなさまからレスポンスによる議論の活性化が、この種のMLでは存在意
義の一葉ですので、気軽に一行のコメントでも返して頂けたら、またそこから
発展する議論が楽しみです。
では以下で早速本文に入ります。
今後とも宜しくお願いします。
どうぞお知り合いのかたにも広めて下さい。
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2 不良債権問題の本質−破綻以降
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いきなりこのテーマというのもなんとも重いが、論文を書くつもりではなく、
最近のトピックに即してコメントを付けたい。
最後にまとめも付記しているので、そちらを先に読まれてもよいかもしれない。
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長銀の最大の債務先である日本リースの買収の件が進んでいる、と新聞報道が
あった。これは大変にすばらしいことであり、今後の不良債権処理や、会社の
破綻処理の先例として期待がもてる。
というのも、会社更生法が適用になった企業は、生鮮食品と同じようなもので
早く処理されれば価値は目減りしないが、長い時間が経過するほど腐る割合が
大きくなってしまう。メーカーなどよりも、目にみえる形の設備を持たないリ
ースや銀行などのサービス業はなおさらである。時間が経過すると、従業員は
優秀なところから抜けていくし、優良な顧客も離れてしまう。培ってきたノウ
ハウも同時に解体してしまう。この場合、ほとんど価値のない資産だけになる。
しかし、主力の従業員が残り、顧客を維持したまま優れた企業に買収されるの
であれば、その企業価値は最大限に保たれることになる。
さらに日本リースの場合は、破綻原因が不動産投資の失敗によるもの、との見
方が支配的である。バブル以降、日本企業が悩まされていることであり、この
損失が決定的なものになってしまった。しかし、日本リースは日本有数の水準
のリース事業の担い手であり、その人材やノウハウが優秀であることは確固た
る事実である。すなわち、不動産投資に失敗したことで、リース部門における
企業価値も一緒に失うことは大きな損失なのである。企業は1度バラバラにす
るとその価値が戻ることはない。そして、企業価値を維持して第3者にできる
だけ高く売却することで、債権者である金融機関にとっても融資による焦げ付
きを最小に抑えることにつながり、従業員も雇用が確保される。「リース部門
だけ売却」というメリットは非常に大きいのである。
このように不良債権問題は、破綻した時点で全てが終わってしまったかのよう
に取られがちだか、重要なのは、破綻が明らかになった後の対応である。価値
を維持したまま主要部分の売却に踏み出している日本リースは、成功事例であ
り、そうした対応ができないまま消滅してしまった企業は失敗例であるといえ
る。三洋証券はその例であり、すぐ売ればある程度の価値があったが、ずるず
るいったせいで、ほぼ無価値になってしまったのである。その意味では、そこ
のスピードと決断が要請されることになる。
長銀も本来であれば日本リースと同じくらい海外の金融機関にとって高い価値
の企業のはずだ。であるならば、判断を早急にして、優秀な人材やめぐまれた
顧客が流出する前に対応すべきである(すでに優秀な人材は流出をはじめてい
るが)。いたずらに対応を遅くして、結局価値のないものにして切り売りする
ようなことになれば、そこでも大きな損失が発生することになる。
日本は企業の破綻に対しては、完全清算でのぞむパターンが多いが、再生を指
向して、事業継続をコーディネートする手法が取り入れられることを期待したい。
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なんとも硬い文章になってしまったが、まとめると以下のようになる。
破綻する企業が相次ぐが、破綻したからといって企業価値の全てがただちに消
滅するわけではない。優良な部分はスピードある対応をして、最大価値額で売
却することで、不良債権額も最小になり、人材・顧客を含めたその企業価値の
継続が可能になる。この方向性は今後取り入れるべきである。
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3 編集後記
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とりあえず、創刊号を書き上げました。
読んで頂いて有り難うございます。
長くなってしまいましたね。ちょっと反省。
内容はどうでしょうか。
皆さんの期待に添っているでしょうか。
もし、内容的に硬すぎるという要望が強ければ、対応する予定です。
全然「基礎知識」になってない、いう気も自分でしますので、
もう少し分かりやすい内容にするかもしれません。
また、裏話的な内容も適宜書く予定です。
ではまた来週。
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○メールマガジン「!!使える!!経済の基礎知識から応用まで」1998/12/6
発行部数:1932部
発行者 :片山 健太郎
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