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Economics Today

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       !!使える!!経済の基礎知識から応用まで
              Economics Today
                2000/9/21号 
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みなさん、こんにちは片山です。
今はパリを離れ、ドイツのハイデルベルグという都市に来ています。
ここでは、大学図書館のインターネットが一般にも開放されていますが、
もちろん日本語は使えません。なので、大学のLANに勝手に自分のPCを
つないで使っています。(いいのでしょうか?>笑)

さて、今回と次回は、2回に分けて持株会社の分析をします。
というのはこちら(ドイツ)では、日経新聞が9DM(約450円)もするのですが、
19日朝刊を一面だけチラリと立ち読みしたところ(さすがに馬鹿らしくて
買いませんでした>笑)、金融庁が持株グループの金融機関の機関債発行を
制限する、という記事がありました。なので

 【今回】・持株会社って何?何がいいことなの?
     ・持株グループつくると、独占になっちゃうんじゃないの?
 【次回】・なんでグループに金融機関が入ると問題なの?なんで規制するの?

という感じでまとめてみます。

なので今回は、持株会社について簡単にまとめたあと、デメリットとも
考えられる独占状態になっちゃうことへの理論的考察をします。

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■目次
1 持株会社とは(初級)
2 持株会社と独占禁止政策の整合性(中級)
3 編集後記
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1 持株会社とは(初級)
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■持株会社って何?

企業がグループを形成する際に、ある1つの会社が参加グループ企業の株式を
保有することで、そのグループの扇の要のような(全体の親会社的な)役割を
果たすことがあります。この会社を持株会社といいます。この会社自体は、実際
物をつくったりするわけではなく、グループ全体の統括などをします。

以前は独占禁止法で、このシステムは禁止されていたのですが、近年になって
解禁されました。(確か2年位前だったと思います・・)

■持株会社制度のメリットは?

1 グループ全体の意思決定を持株会社がすることで、グループの長期的な
  戦略などをつくることができる
  =持株会社の役員は、長期計画や全体戦略策定に専念できる
2 グループ企業内の調整がスムースになる
3 連結納税制度によって納税額が少なくなる可能性がある

++++++++++++++++++++ 用語説明 連結納税 ++++++++++++++++++++++++++++
連結納税:グループ企業全体を連結した収益に対して税金をかける制度

例)
グループ企業の収益  従来の課税対象額  連結納税制の課税対象額
    10         10
     0          0               全体で10+0+(-5)=5
    -5          0

連結納税の対象になる会社は、親会社(持株会社)が子会社の株式の50%以上を
保有している会社ですが、最近では実質的な支配権限が及んでいる会社は全て
グループに含めるようにもなっています。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

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2 持株会社と独占禁止政策の整合性(中級)
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戦後、健全な競争を阻害する「独占」を防ぐために独占禁止法が制定され、
公安委員会によってカルテルが摘発されるなど、公正な競争が行われるように
それなりに機能してきました。

独占がなぜよくないかは、ミクロ経済学では初歩的ですが、軽く復習すると
完全競争の世界では、逆需要関数と限界費用線の交点まで生産して、そこで
価格が決まります。ところが独占の場合は、限界費用線が限界収入線と交わる
ような点が実現するように数量を調整できるので、その数量調整によって、
価格が上昇し、いわゆるDead Weight Lossが発生して、社会厚生が減少して
しまうわけです。
(経済学部出身の方には、なつかしい言葉達なのではないでしょうか?)

# 完全競争:P(価格)=MC(限界費用)/独占:MC(限界費用)=MR(限界収入)

さて、金融持株会社を含めた持株会社を解禁する政策は、確かにグループ化を
すすめ、独占か寡占の状況を生み出しますが(現に金融グループはすでに3つ
程度)、上記の独占の弊害はどのように考えたらよいのでしょうか。

それはコンテスタブル・マーケット(Contestable Market)の考え方です。
簡単にいうと、実際マーケットが独占の状況であっても独占価格にはならない、
というものです。(銀行だと操作変数は金利でしょうか)

ロジックは、参入・退出にコストがかからないマーケットであれば、独占企業が
価格を限界費用よりも高くしたら、新規企業が参入して、それよりも少し安く
価格を設定すれば、利潤を上げることが可能になります。
独占企業の価格が限界費用よりも少しでも高い限りは、新規企業にとっては参入の
インセンティブがあるので、独占企業にとってこのヒットアンドラン戦略の脅威は
続き、結局独占企業も価格を限界費用と同じに設定するということです。

つまり、この理論によれば独占市場でも、実質的には完全競争と同じ状態に
なるわけです。(厳密には他にも仮定が必要ですが)

さて、これを日本の金融業界に応用するとどうなるでしょうか。
現在のように、日本で3つの金融グループに収斂して市場が寡占状態になっても、
そこで独占利潤を獲得するための行動をとったら、異業種参入や外資系金融機関
など外部者が市場へ参入して、利益を失うことになります。現在は異業種参入や
外資系への許認可も緩くなったので、ますますこの状況になりつつあるといえます。
そこで、日本の金融グループは独占企業的な行動には移らないと考えられるのです。

というわけで、独占禁止法と今回の持株解禁は、経済学的には矛盾しない政策
とも考えられるのです。

また今回は理論と結びつけて解説しましたが、
・むしろグローバルな金融マーケットで生き残るために、やむをえず手を結んだ
・すでに外資系が入ってきていて、寡占状態ではない
・参入や退出はいまだ自由ではない(許認可もコストとみることは可能)
・現在は政策的な低金利なので、競争はもともと出来ない
など実体面の現実もあります。

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3 編集後記
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お疲れ様でした。一時期日本語でインターネットが出来ない環境でしたが、
自分のPCをつなげると、やはり快適ですね。日本語が読めると、オリンピック
情報も沢山入ってきます。(悲しいかな、テレビで日本関連のは全くやって
ないので、今回のオリンピックは1つもライブで見れなそうです)

ドイツではミュンヘンのオクトーバーフェスト(大ビール祭)にも行って
きました。こちらの人は昼からがんがんビールを飲みますし、僕も負けない
くらいビールを沢山飲んでいます。
このままではビール腹になってしまう!(えっ、もともと?>笑)
ではまた。
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