━━ Economics Today ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
!!使える!!経済の基礎知識から応用まで
Economics Today
2000/6/25号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ このメールマガジンは、まぐまぐ・Pubzine・Cocode・Melma!で読者
登録された方へ送付されております。ご購読有り難うございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
みなさん、こんにちは片山です。
今日は投票日でした。投票されましたか?
これを読まれている頃には、大勢が決している、という方が多いのでしょうか。
今の所、自民党は微妙な線ですが、最終的にはどうなるのでしょうか。
そんな中、今日は財政再建とか景気対策なんかについて、今までとは違う
政策の意志決定に関するアプローチでまとめてみようと思います。
中ほど以降は、今回の選挙も絡めて分析していますので、そこだけでも
読んでみて下さい。
新しく読者になられた方へ;
このマガジンは「10秒で流し読む」というよりは「コーヒー1杯と5分の
時間でちょっと考えながら読む」という感じです。分かりやすいとは思うので
損はさせないつもり、です。よろしくお願いします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■目次
1 財政再建の考え方−今回の選挙をふまえて−
2 編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1 財政再建の考え方−今回の選挙をふまえて−
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最初の方は、今までにも書いたことがあるので、既にご存知の方は中ほどから
読んで頂いても構いません。
【財政赤字の現状】
現在の日本の財政赤字はとても悲惨な状況です。
具体的には、対GDP比でみてみると
・国+地方 長期債務残高 110%
・国 長期債務残高 90%
・国+地方 単年度財政収支 10%の赤字
となっています。
GDPは約500兆円ですから、規模としてはとても大きいわけです。
★用語説明★
長期債務残高:国債や地方債などの債券発行残高のこと。国債は10年国債
(10年後に償還する)などもあり、長期的な債務が多い。
単年度財政収支:その年の「税収−財政支出」=「入ってくるお金−使うお金」
この差額・赤字分は国債などを発行して穴埋めする。
ちなみにEU通貨統合の参加条件は「国+地方の長期債務残高60%、国+地方の
単年度財政収支3%以内」ですから、遠く及ばない事も分かります。
先進国の中でも最悪の水準です。
【財政赤字の影響】
1クラウディングアウト;
需給悪化懸念→国債価格低下、金利上昇→長期金利上昇→設備投資減少
→円高→経常収支赤字
2財政の硬直化;
予算の中の国債費(利子支払など)上昇→その他の予算減少→硬直化
→非効率的な予算運営
3ジャパンプレミアム発生;
累積赤字増大→国際的な信用低下→金融市場でJapan Premium発生
→金融機関の資金調達困難→貸し渋り
4公共投資がふえ、GDPにプラス=景気浮揚効果
(この効果を強調して「財政赤字にしてでも景気対策を!」というわけです)
5リカードの中立性命題の状況;
将来の増税を予想して、減税してもその分貯蓄に回し消費は増えない。
【今回の選挙と財政政策の関係】
政治家は選挙で当選するのが目的ですから、とにかく地元の人や有力な支援者
のための政策を声高に公約します。ひたすらバラマキを約束するわけです。
(より専門的な政治的景気循環論についてはバックナンバー参照)
自民党・亀井さんなんかは「補正予算も早急に組む」といってますが、既存の
バラマキ型公共事業は、経済全体にそこまで意味ありません。効果があるのは
その公共事業を受注する建設会社や、整備新幹線が敷設される地域だけです。
公共事業予備費もほとんど選挙のためのPR材料です。
結果として、都市型といわれる大多数の国民は補正予算の恩恵は受けません。
また大半を国債発行でまかなうので、逆に金利があがって不利益だけを受ける
わけです。
その中で民主党の鳩山さんの「所得税課税最低限引き下げ(所得税を支払う層
を今よりも増やす≒増税)」という公約は、面白いです。納税者を増やす事で
国民の意識を高め、政治に参加しよう、というニュアンスもあります。
もちろん財政再建も少しは視野に入っています。選挙公約にそんな事をいう
政党はあまり聞いた事ありません。ただ、その後すぐに「児童手当支給、
住宅減税継続」という公約もしたので、ネットでみると、結局政府支出は
増える事になりますが。
【財政再建の考え方】
景気対策と財政再建は対立軸のようにいわれています。現状のように経済が
自律的でないときは、景気対策などによって下支えすることも大事です。
そのために財政赤字は拡大の一途ですが、完全に悪とはいえません。
しかし、将来的には100%財政再建が必要になります。問題はいつ、どの
程度するか、です。
1997年に消費税増税した時には、予想以上のオーバーシューティングで
景気悪化に作用した、とも言われています。慎重になる必要があります。
0金利解除ともあわせ、景況判断が重要になります。
ただし、ポイントは、国民や消費者が、財政再建をどう捉えるかです。
いつまでも政府支出によって景気を支えるわけにはいかず、いつかは財政再建を
しないといけない、という中長期的な視点を持ち、そうした政策を支持すること
が必要になります。その支持とは、具体的には「選挙」を通じて、甘いことを
言っている政治家ではなく、日本全体の将来を見ている政治家を当選させる事
です。
こうした意識を持つ事で、実際政策に対する信認(Confidence)が得られ、
同時に経済もよい方向に向かいます。こうした背景を、十分な情報として流すのも
重要で、それは行政の役割ともいえます。その意味では、行政のマーケティング
の素質も問われます。
結果として国民が短期的な視点でのみ意思決定していると、いつになっても
日本は変わらないでしょう。そのための考えられる施策としては、
・中選挙区への復帰
→地元重視の政治家だけでなく、国全体を考える政治家もなんとか
当選するようにする
(今の所鳩山さんは苦戦のようです。まさに地元に利益誘導しなかったから
でしょう。北海道は保守的ですから、こういうことになります)
・補正予算のための国債発行による金利・投資への影響シミュレーション
→それを透明性のもと開示して、誰が便益を受けるのか、誰が不便益を
受けるのか、を公開する。
などがあります。これらはあえてradicalに書いていますが、日本の政治を
変えるには、こうしたショックセラピーも時には必要になるでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご意見・質問などは気軽にこのアドレスに---- katayama@netjoy.ne.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2 編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
長くなりました。ちょっとアツいですかね?(笑)
微力ながらこれら日本の構造改革については、日夜考えています。
さて、選挙速報を見ながら書いていますが、自民党は229をとりそうです。
株・円はとりあえず上昇しますかね。
来週は、政策の決定のあり方について続きを書こうと思います。
では。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■文中のコメントは筆者のオリジナルな見解であり、一切の権利は筆者に帰属
しています。いかなる目的であれ、無断で複製または転送などを行わないよう
にお願い致します。
Copyright(C) 2000 Kentaro Katayama All rights reserved.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 配信System まぐまぐ http://www.mag2.com/ (ID = 9205)
Pubzine http://www.pubzine.com/ (ID = 3278)
Cocode http://mail.cocode.ne.jp (ID = 0600100042)
Melma! http://www.melma.com/ (ID = m00003291)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○メールマガジン「!!使える!!経済の基礎知識から応用まで」2000/6/25
発行部数:5450部
発行者 :片山 健太郎
E-mail :katayama@netjoy.ne.jp ご意見・疑問などお気軽に
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Economics Today ━━
|