━━ Economics Today ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
!!使える!!経済の基礎知識から応用まで
Economics Today
2000/3/15号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ このメールマガジンは、まぐまぐ・Pubzine・Cocodeで読者登録された方へ
送付されております。ご購読有り難うございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
みなさん、こんにちは片山です。
今回は、現在の不況の本質を確認した後、財政赤字への解消へ向けた
アイディアを何点か頂きましたので、それをまとめる形で送りたいと思います。
(次回にも続きますが)
では。
長くなったので、経済の基礎知識を学びたい方は前半を、実体的なアイディア
に興味がある方は後半を重点的に読まれたら良いと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■目次
1 不況の本質−需給ギャップ
2 財政赤字解消への政策アイディア1
3 編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1 不況の本質−需給ギャップ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今は日本は不況といわれていますが、その本質を確認します。
それは需給ギャップです。
●ミクロ経済学における「需要」と「供給」
「需要」と「供給」の関係は、ミクロ経済学では分かりやすいです。
需要は「ものを欲しがる(≒買いたい)度合い」、供給は「ものを売りたい
度合い」です。なので、それがつりあうように価格が変動する、というのが
完全市場の仮定です。
一般に、
・「ものが安ければ沢山買いたい」=需要曲線は価格の減少関数
・「ものが高いのであれば沢山売りたい」=供給曲線は価格の増加関数
となります。
#余談ですが、このように需要量や供給量は価格の関数になります。
#なので、数学的には本当はグラフを書く時は、量が縦軸、価格が横軸になる
#べきです。でも通常教科書で見るのは、価格が縦軸、量が横軸ですよね。
#なので、これら需要関数:P=-2X+40 などは正式には逆需要関数といいます。
#なぜ、こうしたおかしな慣習になったかといえば、大先生マーシャルが
#間違えて書いたからです。これはウソのような本当の話です。
●マクロ経済学における「需要」と「供給」
さて、ではマクロ経済学における「需要」と「供給」とはなんでしょうか。
細かい議論はしませんが、こう理解してください。
・「需要」は「ものを買おうとすること、あるいは支出する行為」
・「供給」は「ものを売ろうとすること、あるいは所得が増える行為」
そうすると、マクロ経済における「需要」はなんでしょうか?
答えは消費、政府支出、投資などです。ここで投資とはいわゆる株式投資など
ではなく、設備投資やR&D投資など実物的な投資のことです。
式で見ると Y=C+I+G+X-M となります。
(C:消費、I:投資、G:政府支出、X:輸出、M:輸入)
「供給」は、資本収益、企業売上や労働者の賃金など所得につながる事です。
なので代表的個人は、マクロ的には働きを「供給」して賃金所得を獲得して、
何かを「需要」して(=購入して)消費している、という感じです。
ここら辺は感じがつかみにくく、経済学部の学生でも、なれないとアヤフヤ
な部分です。
●需給ギャップ
ようやく、ここからが本題です。(笑)
均衡点では需要と供給が一致している必要があります。
一致していない経済は不安定になります。
ところが現在の日本では一致しておらず、需要が供給に比べて少なく、つまり
「需給ギャップ」が存在しているわけです。
具体的に言えば、消費、政府支出、設備投資など合計の水準が、企業などの
供給のキャパシティーに比べて低い水準なわけです。ちなみに「需要に比べて
供給が高い」ともいえますが、経済の安定のためには「供給を減らす」という
プロセスよりも、「需要を高める」というプロセスが必要になります。
つまり、不況の問題点は供給面ではなく、需要面という事になります。
もちろん、何が供給で何が需要かというのは、一概には言えず単純な問題では
ないのですが、ここが本質的な問題点です。
そしてこの需要は、様々な条件で左右されます。
・消費は、いわゆる将来への不安なども影響しますし、冬ボーナスの少なさ、
2000問題で年末海外旅行の大幅減少などの実体的な側面も影響します。
・公共投資などの政府支出も、この需要を刺激しているわけです。
・企業のリストラなどは企業の資産を健全化することで、新規投資の需要を
創出します。一方で失業者の増大など、将来に対する不安を大きくするので
消費にはマイナスの影響です。
様々な政策を考えられている背景には、こうした需要サイドへの視点が
あります。以前物議を醸したクルーグマン教授の調整インフレ論も、結局は
「インフレをおこし実質利子率を下げる事で、投資需要を増大させよう」と
いうISバランスの需要サイドへの刺激策です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご意見・質問などは気軽にこのアドレスに---- katayama@netjoy.ne.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2 財政赤字解消への政策アイディア1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●浜辺様の意見●
(オリジナルのものを片山が編集・一部修正しました。また通常のマガジン
同様、一切の権利は筆者に帰属しています。いかなる目的であれ、無断で複製
または転送などを行わないようにお願い致します。)
<総論>
○増税よりも歳出削減が重要ということに同意。
○景気回復のタイミングと歳出削減のスピードをどのように調整するか要検討。
○ネットビジネス、遺伝子ビジネス、NPO活動等の活気のある分野の手法や
需要を行政に取り込んで明るく取り組む。
<各論>
1 国と地方合わせての公共事業を大幅に削減する。
2 公共事業の地方分権化(国の直轄事業と地方単独事業の2極分化)を進める。
そのために国から地方へ税源を移譲し、地方自治体の事務に見合った
自主財源を確保。
○国の予算は補助金を削減して、直轄事業に重点化する。
○地方単独事業も、地元住民の費用負担であることが明確に意識されれば
(受益と負担の一致)財政拡大に対する地域住民のチェックが強く働く
→ 無駄な支出が絞られる
3 その結果生じる雇用問題への対応として、職業訓練による転職支援強化。
例)介護福祉ビジネスや地方政府の電子化・アウトソーシング化
→デジタルSOHOワーカーの技能を身につけ易くする。
4 公共事業以外の支出についても、行政経費の節減を図る。
○国・地方における行政の効率化と顧客(住民)満足の向上を図るべく
電子政府化を進める。
※これまでは、公共サービスの「住民への提供」段階に重点が置かれて
きたが、今後は公共サービスの「生産」段階に重点を置く。
※具体的には、企業で導入済みのIT活用による業務改善と効率化を、
国と地方の行政において積極的に推進。
○地方行政の効率化と質向上を図るべく、市町村合併を推進。
その前段階として、IT活用による公共サービスの広域的な自治体連携
(最適人口規模18万人が一つの目安)を進める。
○公共サービスの民営化やアウトソーシング化
→各地域におけるNPOや企業との協働関係の構築
○大都市圏のコンビニや地方圏の郵便局を公共サービスの拠点として活用し、
少ない経費で住民の利便性の向上を図る。(24時間対応も可能)
例)コンビニのネット端末から住民票の交付等を可能にする
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご意見・質問などは気軽にこのアドレスに---- katayama@netjoy.ne.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3 編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お疲れ様でした。
今回も長くなりました。さて、財政赤字解消へのアイディアは続いて
次回も掲載する予定です。掲載内容への意見などは、片山にお寄せ下さい。
議論したら面白い論点もあるので、意見のある方は是非どうぞ。
では、また来週。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■文中のコメントは筆者のオリジナルな見解であり、一切の権利は筆者に帰属
しています。いかなる目的であれ、無断で複製または転送などを行わないよう
にお願い致します。
Copyright(C) 2000 Kentaro Katayama All rights reserved.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 配信システム まぐまぐ http://www.mag2.com/ (ID = 9205)
Pubzine http://www.pubzine.com/ (ID = 3278)
Cocode http://mail.cocode.ne.jp/ (ID = 0600100042)
Clickincome http://www.clickincome.co.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○メールマガジン「!!使える!!経済の基礎知識から応用まで」2000/3/15
発行部数:4450部
発行者 :片山 健太郎
E-mail :katayama@netjoy.ne.jp ご意見・疑問などお気軽に
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Economics Today ━━
|