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 Economics Today
 2000/1/20号
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  みなさん、こんにちは片山です。先日面白い話を聞きました。
  小渕さんが外遊先のある国の首脳会談で、相手の首相に、「私は日本で真空総理と呼ばれています。でもそれをよく解釈すると、
 中身を空っぽにして、みんなの意見を素直に聞くという事です。
 ○△国の◇□さんも明らかに真空です。アジアでは今真空がはやっています。
 是非あなたも真空になってはいかがですか?」
 と言ったらしいです。
  すごい神経ですよね。(笑)これを聞いて実は大物なのかもしれない、と思いました。
  裏話ですが、経済戦略会議も、三宅さんという方が「小渕さん、あなたは経済面が弱いから、首相直属の審議会のような
 ものを作ったらどうですか?」
 と進言したところ、
 「じゃあ、あなた作って下さい。」
 といわれ、その三宅さんが経済戦略会議の事務局長を務めることに
 なったそうです。まさに真空総理。(笑)
  さて、みなさまから、質問や感想をお寄せ頂いています。極力お返事差し上げているのですが、なかなかお返しできないメールも
 あります。申し訳ありません。
 そこで今回は、代表的な質問に2問ほど答える形式を取りたいと思います。
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■目次
 1 規制緩和と構造改革
 2 国債のメカニズム
 3 編集後記
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 1 規制緩和と構造改革
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 Q1:日本は規制緩和、リストラなどの構造改革は必要だが、それと同時に
 発生する中高年の失業問題や倒産などの社会不安はどう解決すればよいのか?
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 ●経済学的効果
  まず、経済学的には、生産関数を書くとすぐ分かりますが、短期的には、規制緩和や構造改革などの生産性向上(技術進歩と同様の効果)は労働力の
 減少を意味します。すなわち、これらは失業を伴うということになります。
 (長期的には異なりますが)
  また規制緩和によって自由競争が進み、参入・退出の結果経済活動は総じて活発になりますが、全体としてプラスでも、既存の部分がマイナスになって
 いることもよくあります。
  ●実際のデータ  僕自身が1997年にリサーチしたとき、特に大店法改正について調べたのですが、具体的な数字を見ると、規制緩和は90〜95年度に年平均
 7.9兆円の需要を増加させる効果があり、これは名目GDP比で1.68%
 に相当します。(経済企画庁調べ)
 この需要効果を経済成長率に換算してみると、年平均0.55%ほど名目
 成長率を押し上げたことになります。この同時期の平均名目成長率は
 3.1%であるから、その内の約2割が規制緩和によりもたらされている
 ことになるのです。
  しかしながら大店法の改正により大型店の進出に伴う小売店の倒産・廃業、といった需要減少効果も計測されていて、これは年平均0.63兆円に
 のぼるとされています。
 また中小小売店の廃業の理由を平成6年の中小企業庁「小売業経営実態調査」
 によるアンケートからみると、多く見積もれば、実に廃業廃店の4割が
 規制緩和による大型店舗の進出の影響とみなすことが出来るのです。
  ********* 用語説明 大店法の規制緩和 ***************************大店法とは、地域にスーパーなどの大型店が進出する際に国からの許可が
 必要とする法律で、そのため申請から出店まで膨大な時間がかかった。
 それを改正して、申請・許可のプロセスを簡素化して出店をしやすくする、
 というもの。しかしながら地域の商店街からの反対などが噴出しており、
 大店立地法という環境への影響を判断基準とする法律が設立した。
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  ●まとめ  すなわち、規制緩和が全員にとってよいものではない、ということです。ただし全体でみると、実施した方がよい部分が多いわけです。
 そこでどうすればよいかといえば、デメリットを受ける層に対しての
 セーフティーネットを充実することです。
 (航空業界自由化→赤字路線は切り捨てざるをえない→離島路線の切り捨て
 →廃止するわけにはいかず→その路線への補助金)
  具体的には、受け皿や流動化する政策を打ち出すことですが、実はこれは構造改革による失業発生にも同じロジックが適用できます。そして、これは
 政府の役割の1つになります。
 (失業対策がまだ不完全という指摘がよくなされますが)
 より具体的な話しはまた回を改めて書きたいと思います。
  まとめると、「規制緩和・構造改革→経済効率の上昇→デメリットを受ける人々発生
 →政府によるセーフティネットの充実必要」
 が大きな流れとなります。
 ただし、セーフティネットの部分がまだ未完全でないので、社会不安に
 つながっているのが現状です。
  ●問題点セーフティーネットの充実が解決策と上で述べましたが、様々な問題点も
 介在します。
  ・セーフティネットが拡充しすぎるとモラル・ハザードが生じること。(頑張らなくても政府が救ってくれるから、努力しなくていいや)
  ・日本人の本質として、競争がなじまないので、自由化を推進しすぎるとどこかで破綻をきたす→その調節・落としどころの判断は困難
  ・規制緩和や構造改革によって、「1 薄いメリットを受ける広い層」
 「2 沢山のデメリットを受ける狭い層」
 というように分化するが、既得権益の層(2)がより頑強で政治的にも
 強い力があるので、規制緩和や構造改革に反対し、なかなか経済効率性が
 実現しないこと。
 (金融ビッグバンなどは、外圧によって実現した)
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 2 国債のメカニズム
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 Q2:よく、国債の利回りが上がると、債券価格は下がるといいますが、
 正式にはどのようになっているのですか?
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 正式な国債の利子と価格の関係は、
             クーポン+(額面−流通価格)/残存期間 流通利回り= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ×100
 流通価格
 
 クーポン+額面/残存期間         1
 = ━━━━━━━━━━━━×100− ━━━━×100
 流通価格             残存期間
  です。これより、流通価格が上昇すると利回りは下がり、価格が下落すると
 利回りが上がることが分かります。
 クーポンというのは株式でいう配当のようなものです。
  また、「債券利子−定期預金利回り」が流動性プレミアムよりも小さければ、
 債券利子は定期預金利回りよりも低いことになります。
 ***** 流動性プレミアム *******************流動性の高い貨幣を持つことによるプレミアム。
 債券はすぐに売買できるので、一定期間預ける定期預金よりも流動性が高い
 **********************************
  すると消費者(投機家)は、債券を売って預金するわけです。それによって債券価格が下がり、同時に上記の式によって分かるように
 債券利子は上昇することになります。
  このようなメカニズムでもって、「債券利子−定期預金利回り=流動性プレミアム」という式が
 恒等式(常に成り立っている)であることが分かります。
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 3 編集後記
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 相変わらず長くて申し訳ありません。国債の式はなかなかご覧になったことは、なかったのではないでしょうか?
 その下のロジックはおまけですので、あまり気にしないで下さい。
 規制緩和についてはペーパーも書いたので、書くことが沢山あって、内容がまとまっていませんが、また機会があれば触れたいと思います。
  こんな感じですが、みなさんの興味にそう内容にしたいとも思いますので要望などお寄せ下さい。
 ではまた。
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 ○メールマガジン「!!使える!!経済の基礎知識から応用まで」2000/1/20
 発行部数:3950部
 発行者 :片山 健太郎
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