動学的不整合性(99.12.29)
この「動学的不整合性」なんていう小難しい単語ですが(経済を勉強している方でも初級者の方は聞いたことないと思います)、実は簡単です。定義は「事前に最適である政策が、実際に政策を行う段階では必ずしも最適ではなくなること」です。
例をあげます。それで一発。学校の定期試験を考えましょう。
我々(学生とします)は「明日が試験」の時、夜眠くなり、明日朝早く起きて勉強すればいいや、という誘惑に襲われることがよくあります。(みなさん経験済みですよね??)そして、これは事前では最適な行動です。そして寝ちゃいます。ところが実際朝起きてみると、頭はボーとして勉強なんか手につかない。かくして思うほど朝は集中して勉強できず試験を受けることになってしまう。事後的には必ずしも最適ではない!試験が出来ない!となります。
これが動学的不整合性のエッセンスです。直感的にはお分かりいただけたのではないか、と思います。この概念を使うと、政策の色々なことが分かります。以下では、もう少し政策に関するトピックを考えてみます。
洪水が頻繁に発生する川があり、そこに政府は膨大な費用をかけて堤防を建設するか、と考えます。すると当初の住民、政府は以下のように行動します。
住民の行動: |
地価が安いので、堤防があればそこに住みつく。堤防がなければ危険なので、住むことはない。 |
政府: |
当初(事前)の最適な政策は以下のようになる。「住民が川の近くに住まず、コストをかけて堤防を建設しなくてもすむ」 |
しかし、住民が川の近くに住み始めた場合、政府の最適な政策は堤防を建設することに変わるのです。(洪水によって川の近くに住む住民が受ける被害によるコストは、堤防建設のコストよりも大きくなると考えられるから)
よって、経済合理的な民間主体は、地価の安い川の近くに住み始めることになるわけです。川の近くは堤防がない場合は危険ですが、政府は洪水による被害を恐れて必ず堤防を建設すると合理的に予想するからです。
結果として、政府と社会にとって望ましくない状態が均衡として実現します。事前に最適な政策は達成されずに、実際に実現する状態は
「住民が川の近くに住み、堤防を建設する」
となってしまうのです。これが動学的不整合性の問題です。