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内外金利差の分析(00.9.8)

 

【内外の金利の現状】

日本はご存知のとおり低金利で、いまや銀行の定期預金だとわずか年率1%、期国債(10年物)でも2%をきるかきらないか程度です。ところが、米の債の金利は、最近銀行の窓口でもMMFという商品で宣伝しているので、存知の方もいるとは思いますが、年率6%近いのです。さらに以前触れましたが、米は景気減速(ソフトランディング)を目標として、さらなる利上げ観測もされています。なぜ、こんなに差が出るのでしょうか。

【理論上の内外金利差】

国際金融の教科書を開けば最初のほうに書いてありますが、金融市場が完全であれば、裁定(arbitrage)が働いて、国内と海外の金利は等しくなります。

簡単にいえば、貸す方は「こっちだと2%であっちで6%なら、6%の方に預けよう」となるので、2%の借り手は「金を借りるために、もう少し金利を上げよう」となり、6%の方は「もう少し金利を下げても借りられるので下げよう」となって、結果的には同じ金利になるまでその行動は続き、市場金利は同一水準になるのです。これを裁定といいます。

さて、ではなぜ日本と米でこんなに金利が開いているのに、裁定メカニズムが働いていないのでしょうか。以下ではそれを分析します。

【内外金利差発生のメカニズム】

経済学的には2つの根拠が考えられます。

1つめは、為替リスクの問題です。相対的に金利の高い米で運用した場合、運用金利を含めた資産は当然ドル建てになるので、為替レートの動向によって円建ての資産保有額が変動することになります。そのリスクをとらない投資家が多いのです。

2つめは、ホームカントリーバイアスです。これは自国通貨を保有する方が効用が高いということで、相対的には多少損しても、予備通貨としての役割や貯蔵価値としては日本人なら円の方がよいわけです。これも積極的に取引をしない理由といわれています。

【内外金利差の実体経済への影響】

直接われわれの生活には影響しませんが、金融マーケットでは大きなポイントになります。というのは以前破綻したLTCMや、世界最大の投資グループでロシアのデフォルトなどで大損したソロスファンドなどは、逆にこれを利用していたわけです。

つまり、金利の安い国で資金を借りて、金利の高い国で運用すれば、それだけで利ざやが稼げるわけです。ところがこれが成功するかどうかは、為替リスクをどの程度と見るか、ということと表裏一体であり、アジア通貨危機がロシアに波及したことで為替や金利が大きく変動し、その利ざやの構造が壊れたのです。そうなると今度は「返せば返すほど損する」という悪循環で破綻してしまったわけです。

ちなみにLTCMには、メキシコ政府も資金運用先として膨大な額を預けていてさらにレバレッジという、借りた額の何倍もの額を運用する方式をとっていたために、儲かるときはすごく儲かるのですが、損する時は一気に損してしまうのでした。

ただし個人的には、これから日本人も郵便局にずーとお金を預けているのではなくて、リスクをとって投資するべきだと思っています。ここら辺についてはまたいつか触れます。

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